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細長い触手たちを物に絡ませてつかむソフトグリッパー 米ハーバード大などが開発Innovative Tech

» 2022年11月01日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米Harvard Universityと米MIT、ドイツのZuse Institute Berlinによる研究チームが発表した「Active entanglement enables stochastic, topological grasping」は、複数の細長い触手の集合体で物体をつかむソフトグリッパーを提案した研究報告だ。空気を送ると伸びた触手は丸まり、壊れやすいものや不規則な形状のものをつかむ。

植物をつかむソフトグリッパー

 今回は自然界からヒントを得て、クラゲが獲物をつかむのと同じように、細長い触手の集合体を使って物体を絡め取る、新しいタイプの柔らかいロボットグリッパーを提案する。

 個々の触手は単独では弱いが、触手の集合体は重いものや奇妙な形のものをしっかりとつかむことができる。このグリッパーは、単純な膨らみを利用して物体を包み込むため、センシングやプランニング、フィードバック制御を必要としない。

 それぞれの触覚は、中が空洞のゴムチューブになっており、片側のゴムがもう片方より太いため、空気圧をかけるとチューブがくるりんと丸まって強めのパーマを当てたようにコンパクトになる。

 丸まった触手は互いに結び合い、対象物に絡み合い、絡み合うごとにホールドの強さが増していく。集合的な保持力は強いが、個々の接触は弱く、最も壊れやすい対象物でさえも傷つけない。対象物を解放するには減圧するだけだ。

12本の触覚の集合体でさまざまな物体をつかむ実験

 12本の触手を用いたシミュレーションと実験により、さまざまな観葉植物やおもちゃなど、さまざまな物体をつまんで、グリッパーの有効性を検証した。

 このグリッパーは、農業生産や流通に関わる柔らかい果物や野菜、医療現場での繊細な組織、さらには倉庫でのガラス製品のような不規則な形状の物体をつかむなど、実際の用途に応用できる可能性がある。

Source and Image Credits: Becker, Kaitlyn, Clark Teeple, Nicholas Charles, Yeonsu Jung, Daniel Baum, James C. Weaver, L. Mahadevan, and Robert Wood. “Active entanglement enables stochastic, topological grasping.”



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