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マネーフォワード経営陣の本棚をのぞき見 影響を受けた本は?IT経営者の本棚(3/4 ページ)

» 2022年11月09日 12時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

瀧俊雄執行役員・CoPAの本棚

photo 瀧さんの本棚
photophoto 瀧さんの愛読書

本人コメント

 ビデオ会議の背景にもなっている、蔵書の選抜組みたいな内容です。実際にミーティング中に触れ、勧めているものばかりです。

 テクノロジーやベンチャーに関しては、本になるころには周回遅れなことも多くあまり読みません。それよりは物事の原理原則であったり、社会の動き方をちゃんと理解する、心地よい話ではなくて、事実をできるだけ問題意識高く受け取れるような読書を心掛けています。

 とはいえ並べてみて思うのは、ナッジ(行動科学の観点から、より良い選択をそっと後押しすること)、情報社会と個人、デザイン、将来世代、高齢化社会、金融業界の歴史、包摂といったテーマと、「平成の反省」みたいなテーマが多くて、この辺りの確証バイアスが高いなとも思ったりします。

 印象に残っている本は3冊あります。1冊目は「市場対国家」(ヤーギン=スタニストロー著)です。高校3年の夏休みに単行本を図書館で見つけて、最終的に経済学を専攻するきっかけとなった本です。

 原著が書かれたのは1998年ですが、当時の世界観で、横断的に資本主義と計画経済の成り行きを描き、さまざまな経済の在り方があることを知る一冊になりました。今でも、日本と海外や、デジタル経済とそれ以外を比較することが多い中で、それぞれにある種の安定状態があることを忘れないようにしています。

 2冊目は「開発主義の暴走と保身」(池尾和人著)です。学部時代に池尾ゼミでした。金融制度への提言で有名な先生でしたが、大学では「日本経済システム論」という名物授業で教壇に立たれており、戦後日本経済に即して成立した金融システムがもたらした長期的な影響をこれでもかと知ることができる貴重な授業でした。自分自身の起業やそれ以外の活動も、そこで教えられていた問題意識に即したものともいえ、最も体系的に近い先生の著書がこれだと感じています。

 最後は「こち亀」(まんが「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の通称、秋本治著)71巻です。堅い本ばかり紹介しちゃったのですが、こち亀を久しぶりに読み直していていたらあの「勝鬨橋ひらけ!」の前の話が、給与を実験的に銀行振り込み払いにする、という内容でした。

 今や電子マネー払いが議論になっているタイミングですが、こんなに最近(といっても1991年)まで世の中の常識は現金払いだったのか、という驚きがありました。


瀧俊雄さんのプロフィール

 2004年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券に入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学MBA、野村ホールディングス株式会社の企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードの設立に参画。内閣府規制改革推進会議専門委員(共通課題対策ワーキング・グループ)、一般社団法人電子決済等代行事業者協会代表理事、一般社団法人MyDataJapan理事、一般社団法人Fintech協会アドバイザー、金融情報システムセンター安全対策専門委員、経済産業省認知症イノベーションアライアンスWG等メンバー。


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