総務省の報告書案が楽天モバイルに圧倒的に有利な内容となったことから、楽天モバイルは報告書の公表と同じ日に賛同のコメントを発表。先の決算説明会の場でも、楽天モバイルの代表取締役CEOであるタレック・アミン氏は「大変嬉しい」と話し、競願を申し出て2024年3月からプラチナバンドの使用を開始する方針を打ち出している。
一方でこの案は、プラチナバンドを持つ3社が圧倒的不利な内容でもある。先のタスクフォースにおいて3社は、プラチナバンドの再割り当てに必要な費用として750〜1150億円を見込むとしていたが、それだけ莫大な費用を全て自己負担し、デメリットにしかならない作業を進めなくてはならないとなれば、不満は決して小さくないはずだ。
実際、プラチナバンド再割り当ての議論で強硬な姿勢を見せていた楽天モバイルに対する、3社の不満は小さくないようだ。KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、2022年11月2日の決算会見で楽天モバイルに対し「言いすぎな所があると思う」と話しており、ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏も、2022年11月5日の決算会見でプラチナバンドを持たない楽天モバイルに理解を示す一方、再割り当ては既存顧客に与える影響が小さくないことから「少し地に足を付けた形でゆっくり会話できたら」と、やはり議論の姿勢に疑問を呈していた。
確かに先のタスクフォースを傍聴していた筆者から見ても、楽天モバイルの矢澤氏が、自社の主張が通らなければ特定の1社からプラチナバンドを奪うことも辞さないとするなど、強硬な発言を繰り返しスタンドプレーが目立つ印象を受けた。また楽天モバイルの意見が全面的に評価されていた訳ではなく、同社の主張に有識者が疑問を呈する場面も少なからずあった。それだけに、楽天モバイルの主張を全面的に受け入れた報告書案が出てきたことには驚きがあったのも事実だ。
残念ながら筆者は日程の都合上、報告書案が提示された同タスクフォースの第15回会合を傍聴することはできておらず、その時どのような意見が有識者などから出たのか現時点では分かっていない。それゆえここからは筆者の推測にすぎないのだが、ここまで楽天モバイル寄りの結果となったのには、総務省の「携帯大手3社による市場寡占を崩して競争を促進したい」という一貫した姿勢が影響しているのではないかと考えられる。
総務省は長年続いている3社による寡占による市場の硬直化を長年問題視しており、2019年の電気通信事業法改正で3社が力を入れてきたセット販売や端末の大幅値引、いわゆる“縛り”に厳しい規制をかけてきたのも、流動性を高め3社から他の事業者に移行するユーザーを増やし、競争を促進する狙いが大きい。
その一方で総務省は3社に対抗できる事業者の新規参入にも力を入れており、MVNOの参入促進やテコ入れにも力を注いできた。それだけに新規参入の楽天モバイルに関しても、不利な要素をいち早く減らして3社に対抗できる勢力になるよう、優遇が必要という考えが働いた結果、このような結論に至ったのではないかと推測される。実際先の電波法改正に関しても、実質的に楽天モバイルにプラチナバンドを再割り当てする根拠を与えるためになされたのでは? という見方が少なからずあるようだ。
無論、先の報告書は現段階ではあくまで“案”なのだが、これまでの事例を振り返れば、現在の案がほぼそのままの形で報告書となる可能性が極めて高い。それゆえ楽天モバイルへのプラチナバンド再割り当ては既定路線となりそうだが、今後その影響が消費者、そして業界全体にどのような形で出てくるのかは、しっかり見極めておく必要があるだろう。
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