ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

中国で「日本のガソリン車」が再評価、中古市場拡大でリセールバリューに注目浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/4 ページ)

» 2022年12月15日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

23年のガソリン車販売は10%減予想も

 同レポートは19年から毎年発表されているが、新エネルギー車の普及を考慮して今回初めてEVが調査対象になった。ただ長期データに乏しいため、1年後の残価率が算定されている。

 EVのパイオニアで圧倒的なブランド力を持つテスラがトップだったが、中国メーカーとの残価率の差はさほど大きくなく、小鵬汽車(Xpeng)、蔚来汽車(NIO)といった中国新興企業も上位に入った。車種別では100万円を切る格安EVの「宏光MINI EV」が85.3%とトップで、テスラのModel Xの84.6%を上回った。

EVは1年後残価率を算定。こちらは、テスラ以外は中国メーカーがランクインする結果となった

 ただ、EVの残価率は電池の劣化に左右される面が大きく、また今回のレポートはガソリン車が3年後の残価率を算定しているのに対し、EVは1年後であるため比較が難しい。

 そのため、19年に業界団体が試算した「EVの3年後残価率は32.31%」という数字が再び取りざたされ、「やはり日本のガソリン車は優秀だ」との声も多く寄せられている。

 中国汽車自動車協会は、23年の国内自動車販売台数を前年比3%増の2760万台、そのうち新エネルギー車は同35%増の900万台に達すると予測している。

 22年に新エネ車販売が90%伸びたことを考えると大失速だが、新車の3台に1台は新エネ車という計算になる。また、中国乗用車市場信息聯席会は「(22年で打ち切り予定の)自動車取得税半減政策が延長されないなら、23年の乗用車市場はゼロ成長になる」と予測し、特にガソリン車は同10%減の1510万台に落ち込むとの厳しい見方を示した。

 中国のEVシフトは加速する一方で、ガソリン車の生存空間はますます圧迫されているが、中古車市場の拡大と残価率に対する関心の高まりは、EVへの取り組みが遅れる日本メーカーにとって、数少ない明るいデータといえる。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.