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Fire TV化した「Echo Show 15」は、スマートスピーカー“終わりの始まり”か小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2022年12月15日 16時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 イーロン・マスク氏がTwitterを買収すると、すぐに大規模なレイオフが始まった。それだけTwitterの収益は危機的状況にあるという事だろうが、Amazonも例外ではないようだ。11月半ばには、米Amazonは1万人規模のレイオフを計画していると報じられた

Amazon Echo 第4世代モデル

 その筆頭に上げられたのが、音声アシスタント「Alexa」を含むハードウェア部門である。11月22日には、海外メディアでAmazon社員の談話として、Alexa事業は2022年に100億ドルの損失を出す勢いであると吐露している。日本円で約1兆3567億円(12月15日時点)である。

 2016年に登場したスマートスピーカー「Amazon Echo」は、あっという間に全米を席巻し、Google、Appleも相次いで参入。日本は米国のブームから1年程度遅れて、販売開始となった。日本でもLINEが「Clova」で参入するなど、一定の盛り上がりを見せた。

 だが、市場はあっという間に飽和した。AppleのHomePodは、競合他社より価格が高かったこともあり、事業的には敗退と言っていいだろう。LINE Cloveも2022年10月末に端末販売を終了、サービス自体も23年3月末で終了する。Googleも収益化に苦しんでいるという。そんな中、Amazon Echoも無事では済まなかったという事だろう。

あまりにも拡散したEcho

 Amazonには、複数の事業がある。もちろん物販は祖業ともいえるわけだが、ソフトウェアサービス部門もハードウェア部門もあり、それらが複雑に絡み合っている。

 例えば電子書籍ストアKindle向けに、専用電子書籍端末を複数モデルを販売している。映像配信としてはAmazon Primeビデオを展開し、それ用のハードとしてHDMIに差し込むFire TVシリーズもある。Fireタブレットは、Fire TV端末とKindle端末のハイブリッドという位置付けだ。

 音楽配信ではAmazon Musicを展開しているが、Echoシリーズはここと結び付くといえるだろう。以前のEchoはモノラルだったが、2019年のEcho Studioでは、音楽再生スピーカーとしての能力を飛躍的に向上させた。2020年には従来モデルの大幅なモデルチェンジを行ない、小型のEcho Dot、スタンダードモデルのEchoもステレオスピーカーとなった。

 その一方で、派生モデルも多数展開した。完全ワイヤレスイヤフォンのEcho Budsは2019年に米国で発売されたが、日本で発売されたのは第2世代となる2022年モデルだ。2019年にはコンセントに挿す「Echo Flex」も登場したが、マイク感度が低いなど品質上の問題もあり、2021年10月頃には販売終了となっている。2020年には車載モデル「Echo Auto」が登場したが、これも現時点では販売終了。米国では第2世代が発売されているが、日本で発売されるかは未定だ。

 個人的には2020年に大幅リニューアルしたこともあり、Echoはスマートスピーカーというより、Amazon Music用スピーカーとして好調なのだろうと思っていた。だが「あれ?」と思ったのが、2022年のEcho Studio新モデルであった。てっきり他に合わせて後継機は球体で出るのかと思ったのだが、フタを開ければ単なる色違いというだけで、ハードウェア的な変更点はなかった。

 Echoにはスピーカーをリンクできる機能がある。これはモノラルスピーカー時代に、2つをペアリングするとステレオスピーカーになるという機能だった。現在はこれが拡張されて、Fire TVとグループ化してホームシアターシステムを構成できるようになっている。

 Amazon Musicは空間オーディオをサポートする代表的な音楽サービスであり、これが楽しめるEchoはEcho Studioしかない。Echoを4つ5つペアリングして、ディスクリートなサラウンドシステムが構成できたら面白いと思うのだが、そちら方向への進化はまだ聞こえてこない。ソフトウェア的には、“空間オーディオ処理技術”がアップデートされたが、空間オーディオ対応スピーカー開発は、停滞してしまっている。

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