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「フロッピーで提出」「目視が必要」 進む“アナログ規制”見直し、地方は追随できるか?小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)

» 2022年12月22日 14時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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国は2年で動く、地方はどうか

 ここで言うアナログ規制とはなにか。平たく言えば、人が出掛けて行くことを規定したもので、主に7項目が上げられている。いわゆる現地調査や目視確認、現場立ち会い、対面確認などだ。

主なアナログ規制(地方公共団体におけるアナログ規制の点検・見直しマニュアル)

 この7項目に「フロッピーディスクでの提出を規定したもの」を加えて調査した結果、国レベルだけでおよそ9000条項が見つかった。これを令和6年6月までの2年間で見直すという。ものすごいスピード感である。国はこのスピードで動くけど、地方はどうする? という問いかけでもある。

 前段でご説明したように、地方自治体には国からの法定受託事務がある。国の法令がDX化すれば、それにひも付いている法定受託事務関連の例規は、半ば芋づる式にDX化されていくことは考えられる。課題は自治事務に関する例規だろう。

 これをマニュアルでは、「首長等の幹部がリーダーシップを発揮し、庁内への呼び掛け等を行うことにより、各部署が点検・見直しの目的や意義を理解して、前向きに取り組む機運を醸成することが重要です」と言う。つまり地方行政DXは、首長のやる気と能力次第という事になる。

 例として、福岡市では行政改革担当、法制担当、DX担当からなるプロジェクトチームを設置、高知市では市長を本部長とする「DX推進本部」を中心に、テーマごとにプロジェクトチームを設置しているという。つまり現場部署と専門チームで見直しのボールを投げ合いながらやっている、という事だろう。

 いずれにしろ、改革に前向きでデジタルに強い「長」がいるところは先に進むが、そうでないところは進みが遅くなる。地方自治体は上下や横方向にもつながっているので、どこか1箇所だけがDX化しても他ができていなければ、いつまでも「基本インタフェースが紙」という事になりかねない。少なくとも「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」では、国が定める標準システムになるまでの期限を、2026年3月までに設定しているが、細かいところは「長」の資質にかかっている。

 皆さんの住む自治体の長は、行政DXを推進してくれそうなタイプだろうか。ここ1年以内に知事選や市長選がある自治体もあるかもしれない。行政DXは、誰が長になってもやらなければならない課題なので、争点になりにくい。だが行政改革やIT化のメリットを理解していて、改革に積極的なタイプかどうか、有権者目線では1つの選択肢として有効なポイントとなり得る。

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