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国産AIはなぜ炎上する? 「mimic」開発元に反省点を聞いた 海外産AIは平常運転、待つのは“日本1人負け”か(2/3 ページ)

» 2022年12月26日 10時00分 公開
[松浦立樹ITmedia]

海外産AIの一人勝ち? 国産AIサービスに迫る危機

 mimic以外にも画像生成AIを巡って、炎上した国産サービスがある。セルシスのイラスト作成ソフト「CLIP STUDIO PAINT」(クリスタ)だ。11月末、画像生成AIを利用した作画補助機能を試験導入すると発表していたが、12月には同機能の実装を見送ると発表。ユーザーからの意見を受け、方針転換した。

セルシスに寄せられた意見

 一方、MidjouneyやStable Diffusionなど海外産サービスに対する批判の声は、これらのサービスほど目立っていない。一部のユーザーからは、著作権侵害の可能性のあるソースを学習に使用していると指摘する声も見られる。特にNovelAIは、著作権法を侵害している疑いのあるWebサイト「Danbooru」を学習元に使っていると公表済みだ。しかし、これら3種類のサービスは12月23日時点で、いまだ提供が続いている。

Danbooru側からは「NovelAIとは無関係」という声明も出た

 国産サービスの炎上と、提供が続く海外産サービス。これらのことから菅原氏は「日本企業が日本のクリエイター、絵師向けに画像生成AIを用いた機能を提供すると、炎上するという傾向になりつつある」と指摘。この流れが続くならば、日本企業はAIサービスを提供しにくくなる可能性があるという。

 海外産サービスが大きく炎上しない原因は、言語の違いにあると菅原氏は分析している。「海外産サービスはその概要や利用規約が外国語である場合が多い。それを全て読む人は日本では少数派になる。それらを和訳して発信する場合も、それをやる多くの人が有識者の方で、切り抜きではなく要点をまとめた形で発信するケースが多く炎上しにくいのではないか」

 また、国産と海外産では情報の拡散速度が異なる点にも言及。日本語ならば利用規約の一部を切り抜いたスクリーンショットが拡散しやすいが、海外産で同じことをしても言語を理解できない人には伝わりにくい。SNSにおける情報が広まる速度と届く距離の違いは、サービス提供元の違いによる影響が大きいと説明する。

 「このまま日本企業が画像生成AIに手を出しにくい状況が続くと、国産AIサービスは発展せず、その利益は全て海外に流れていく。日本の絵を学習し、海外の企業だけが利益を上げる構図になれば、企業はもちろん絵師にも利益が還元されず、日本の誰もが得をしない状態になる」

 この問題を乗り越えるためにはインターネット上でのモラルが上がっていくことが必要不可欠であるという。「大きく上がっていくAIの技術水準に対し、多くの人々のリテラシーも上がっていかなければ、建設的な意見を交わすことは難しい。また著作権法などにも正しい知識を持ち、その上で議論していくことが正しい状態であると思う」と菅原氏は私見を述べる。

 その上でまず目指すべきなのは、インターネット上に流れる誤情報を減らすことであるという。「正しい情報を発信しないことは誰にとってもいい状態ではない。気軽に情報発信ができる時代だからこそ、目の前の情報が本当に正しいか判断する能力が必要なのではないか」

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