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「隠しデータ」を金属製品に埋め込む3Dプリント技術 スマホで読み取り、偽造品防止にInnovative Tech

» 2023年01月10日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米テキサスA&M大学に所属する研究者らが発表した論文「Embedding hidden information in additively manufactured metals via magnetic property grading for traceability」は、2次元コードなどの情報データを金属製品に金属積層造形技術を用いて埋め込む技術を提案した研究報告である。外から目視では見えないが、スマートフォンでスキャンすると読み取れ、その情報にアクセスできる。

金属製品に隠し磁気タグを埋め込む手法の概要

 製造した商品や部品がコピーされ、違法に模倣品として置き換えられていないことを確認するタスクは、製造業や防衛産業などにとって重要な関心ごとである。近年では、商品に肉眼では見えない隠しタグを挿入する研究が進められている。

 例えば、3Dプリンタで印刷した造形品の内部に赤外線カメラを介してしか見えない2次元コードを埋め込む技術や、クッキーなどの食品内部に見えない2次元コードを埋め込む技術など、肉眼では見えないが内部に情報を隠し、それを知る第三者だけがその情報を取り出せる研究である。

 今回は、金属部品の製造工程で、認証情報をコード化した隠し磁気タグ(3軸磁気センサー)を製造したハードウェアに埋め込む方法を提案する。この方法は、バーコードや2次元コードなどの物理的なタグを、永久的な識別子となる隠れた磁気タグに置き換えることで、より簡単な偽造品発見を目指す。

非磁性体製品に強磁性体タグを埋め込むことで、ハードウェアに部品認証情報をエンコードする

 研究チームは、性能や寿命を犠牲にすることなく、読み取り可能な磁気タグを金属部品にうまく埋め込むという目標を達成するために、金属積層造形技術を導入する。金属積層造形とは、3Dプリンタを用いて金属を積み重ねて造形する技術を指す。

 金属用3Dプリンタを使用して、これらの磁気タグを非磁性体のスチール製ハードウェアの表面下に埋め込む。非磁性体に埋め込まれた磁気タグは、スマートフォンなどの磁気センサーデバイスで製品の正しい位置付近をスキャンすることで読み取りが可能となり、ユーザーが指定した情報にアクセスできるようになる。

Source and Image Credits: D. Salas, D. Ebeperi, M. Elverud, R. Arroyave, R.J. Malak, I. Karaman. Embedding hidden information in additively manufactured metals via magnetic property grading for traceability.



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