「We Overtake Tesla」(米Tesla社を超える)――こんな企業ビジョンを掲げるのが、自動運転EVを開発する国産スタートアップのTURING(チューリング)だ。2022年に10億円の資金調達を実施し、事業に弾みをつけた。自動運転AIの開発だけでなく、車体も自社で製造する完成車メーカーを目指している。
同社を率いる山本一成氏は、独自開発した将棋AIソフト「Ponanza」(ポナンザ)で、世界で初めて現役の名人に勝った経歴を持つ。その後、将棋AIから手を引いて自動運転EVに転向した。山本氏はなぜ自動車産業にスタートアップとして参入したのか、Tesla社の牙城をどう崩していくのか。
山本氏は自身の経験を基に、成長するAIの現在地、そして今後の事業展望について、ITmediaが主催するオンラインイベントの基調講演で見解を示した。最終的には日本の産業界やビジネスの見通しにまで話題が広がっている。この記事では、同イベント「Digital Business Days SaaS EXPO 2023Winter」(1月31日〜2月19日)の基調講演内容の一部を、開幕に先立ってお届けする。
将棋AIが人間を上回る、ひいてはAIが人間を超えるシーンを作りたいという思いを原動力に、山本氏が将棋AIのPonanzaを開発を始めたのは2007年ごろだ。山本氏が大学生だった当時、AIやコンピュータの成長が見込まれていた一方で、活用に取り組む人は少なかったという。誰もやらないなら自分がやるという気概で、Ponanza開発に着手した。
PonanzaはAIを活用した将棋ソフトだ。プロ棋士と将棋ソフトの対戦をコンセプトにした13年の「第2回将棋電王戦」で、Ponanzaは佐藤慎一四段(当時)に勝利。将棋ソフトが公式戦で初めてプロ棋士に勝った瞬間だった。その後、17年に佐藤天彦名人(当時)との対局で勝利を収めた。
Ponanzaが将棋の名人に勝った後、山本氏はTURINGを創業して自動運転EVの開発にハンドルを切ることになる。テクノロジーの成長や市場動向を捉えてビジネスを展開するポイントはどこにあるのか。
「時代をつかむことです。2012年はAIを伸ばせた。では2022年は何ができるのか。技術的にどのようなことができるか把握して、理想はこれ、現実はこう、だから到達できる目標はこれだ、と考えていくことが大切です。何がどう成長していくのか、自分の担当範囲外でもチェックする必要があります」(山本氏)
山本氏がTURINGで自動運転EVの開発に注力する背景には、AIの進化はもちろん自動車産業の動向を意識してのことだ。「自動車産業は変わらざるを得ない状況にあります。規模が大きな産業で生まれているビックチャンスに乗るしかありません」(山本氏)
しかし、自動運転車は本当に実現できるのか。山本氏は「2030年ごろには自動運転車は出来上がっている」としつつ、技術的な実現と一般への普及は別物だと話す。普及させるためにTURINGが目指すのは、手軽で安心感があって車に興味がない人でも楽しめる移動体の姿だ。それを目指して開発を着実に進めている。
その過程でTesla社を越えるわけだが、山本氏はTeslaに勝つ秘訣(ひけつ)として3つの要素を挙げた。果たして、その要素とは何か。ぜひオンラインイベントの基調講演でチェックしてほしい。
山本氏の講演は、イベントの開催期間(1月31日〜2月19日)はいつでも無料で視聴できる。約1時間の講演は、Tesla社に勝つ方法の他、Ponanza開発時の失敗で学んだこと、会社やチームを生かす考え方などさまざまなノウハウが詰まっている。こちらから事前登録可能だ。
【開催期間】2023年1月31日〜2月19日
※アーカイブ配信期間:2月10〜19日
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
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