続いて、ChatGPTによる法的調査の評価を行う。入力するテキストは「原告を強化するためにどのような証拠を集めるべきか」「被告が提起する可能性のある抗弁」「裁判を避けたい場合の裁判外紛争解決手続(ADR)はあるか」「どの段階でADRの方法を適用すべきか」などである。全てのテキストプロンプトは以下の画像の通りである。
こちらの回答も全て論文内に書かれているため、ここでは特筆したい一部の質疑応答を紹介する。「原告をサポートするためにどのような証拠を集めるべきか」の問いに対して、以下のような回答が得られた。
このように、ChatGPTは原告側を有利に進めるための証拠の包括的なリストと例を提供できると分かった。次に、「被告が提起する可能性のある抗弁」を予測できるかを評価した。回答結果は次の通りである。
ChatGPTが被告から提起される可能性のある抗弁を予測する能力を評価した結果、このような状況において、例を複数挙げて合理的な回答が提供できると分かった。
より複雑な判例でもテストし、ChatGPTの能力を評価する。米国で実際に起きた「Rogers v. Tennessee事件(2001)」で実施する。被害者は被告に刺された後、約15カ月間昏睡状態が続いた。被告は殺人罪で起訴されたが、被害者は被告の行為から1年1日以内に死亡していないため、有罪が棄却されると主張したという判例である。
この判例では、被告側と検察側の両方の弁論趣意書をChatGPTに書いてもらい、両者の弁論趣意書を考慮して判決文を書いてもらう。つまり、両者の主張を述べた後にChatGPTに判決してもらった。
ChatGPTが出力した両者の弁論趣意書は論文内で見てもらうとして、ここでは判決文の最後のみを引用する。
In light of the above, it is my finding that the prosecution has presented a strong case for the defendant’s liability for the victim’s death. The defendant’s actions in stabbing the victim, which caused the victim to remain in a comatose state for 15 months before dying, constitutes as a continuing act and the victim’s death is a virtual certainty as a result of the defendant’s actions. Furthermore, the defendant intended to cause serious harm to the victim, and that harm resulted in the victim’s death. The defendant’s conviction for murder is therefore not precluded under common law.
判決文の概要を端的にまとめると、まず冒頭で両者の主張を述べ、次に争点を明確にして検察側の主張は正しく立証されていると評価した。その上で、被害者を15カ月間昏睡状態にしたことを被告の継続的行為としている。また、被害者の死は被告の行動(意図的な危害)の結果として事実上確実であるとした。最後に「被告人の殺人罪の有罪判決は排除されることはない」と結論付けた。
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