ChatGPTはこれらのタスクで優れたパフォーマンスを発揮し、核となる法的問題を特定し、関連する判例を具体的に引用して提示し、主張をサポートする能力を実証した。また、論理的な推論で両者の主張を考慮して判決を起草することもできた。
特筆したいChatGPTのもう1つの特徴は、同じ質問に対してさまざまな回答を生成できることで、このモデルによって生成した原稿は2つとして同じものはない。膨大な量の法律文書や判例を迅速に検索し、関連情報や引用を弁護士に提供できることは大きな利点となり、弁護士の時間を節約し、仕事の正確性を高めることができるだろう。
またChatGPTは、裁判外紛争解決(ADR)の分野でも活用できると思われる。案件の法的問題を迅速かつ正確に分析し、説得力のある議論を素早く生成できるChatGPTは、弁護士が仲裁や調停などのADR手続きに備える際にも役立つだろう。
しかしながら研究チームは、総合的には有能な訴訟弁護士ほど高度ではなく、ChatGPTが作成する草稿や研究作業は法学部の1年生ほどと考察している。そのため現段階では、ChatGPTは訴訟弁護士の代替ではなく補完として捉えるべきだという。訴訟弁護士の仕事を助けることはできるが、人間の弁護士の専門知識と経験を完全に置き換えることはできないとした。
この差は、ChatGPTは2021年までのデータしか学習していないため、原告の主張を裏付ける最近の判例は考慮されないことがいえる。ChatGPTは法律業界向けに特別に設計されたツールではないことを考慮すると、将来的には「Westlaw」や「Lexis」などの著名な法律データベースが同様の技術を採用した場合、最新のリソースを利用することで、ChatGPTは優れた検索と法的分析能力を発揮することが期待できる。
この流れで人間の弁護士が考えたいのは、テキストプロンプトを使ってAIに明確かつ正確な指示を与える能力、出力された内容が正しいかを見極める能力、これらが弁護士にとって貴重なスキルになるということだろう。
他方で懸念もあり、例えば弁護士が法的文書を作成するため、入力にその内容を具体的に書いたとする。現段階では、ChatGPTが生成した出力は保存されず、モデルは以前の入力や出力を記憶せず、単一の出力を生成するためにのみ入力を使用するとあるが、将来的に条件が変更される場合もあることを心に留めて置きたい。
Source and Image Credits: Iu, Kwan Yuen and Wong, Vanessa Man-Yi, ChatGPT by OpenAI: The End of Litigation Lawyers?(January 26, 2023). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=4339839 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4339839
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