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“AIが人間を査定”は差別につながる? 米保険会社の炎上事例から考える「AIガバナンス」【新連載】事例で学ぶAIガバナンス(1/3 ページ)

» 2023年03月01日 11時47分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 2022年5月、コンサルティング会社のPwC Japanが興味深い調査結果を発表した。業務にAIを導入する日本企業の割合は、21年の43%から22年は53%と、1年間で10ポイント増加した。一方で同時期の米企業は、55%から58%へと3ポイントしか増加しておらず、日米でAI利用の差が埋まりつつあると結論付けられている。

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 体感的にも、この結果は納得できるという方が多いのではないだろうか。もちろん一口に「AI」と言ってもその内容は千差万別。簡単な自動化を“AI”の名で呼んでいるという場合も見られるが、AIを本格的に業務に取り入れ、大きな効果を得たいと考える企業の数は、日本でも着実に増えている。

 一方、このレポートでは気になる結果も出ている。それは日本企業がAIガバナンス(管理・統制)の点で、米国企業に後れを取っているという点だ。

進むAI導入、追い付かない「AIガバナンス」

 「22年の各種AIガバナンス対策の実施比率」において、日米企業を比較すると、例えば「プライバシーを含む関連規制にAIが準拠していることを確認する」という対策については、米国企業が39%であるのに対し、日本企業は20%と約半分にとどまっている。他の施策についても、日本企業は米国企業に対して10〜20ポイントの差がつく結果となっている。

 AIの導入は米国企業に急速に追い付きつつあるのに、AIに対するガバナンスの導入は遅れている――考えようによっては、それは普及が遅れている状況よりも危険だといえるだろう。

 あらゆる画期的な技術がそうであるように、AIもすばらしい価値をもたらす一方、正しく管理されなければ逆に不利益をもたらすリスクも抱えている。それを回避するために必要なのが、まさにAIガバナンスなのだ。それではAIを開発・利用するに当たり、どのようなガバナンスが必要になるのか。実際の事例を基に考えてみたい。

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