パナソニックは3月7日、クラウドファンディングで事業化を果たした家庭用ロボット「NICOBO」(ニコボ)の一般販売を始めると発表した。本体価格は6万500円で、購入者は月額サービスの「ペーシックプラン」(1100円/月)に加入する必要がある。発売は5月16日を予定している。
ニコボは、“弱いロボット”の概念を提唱してきた豊橋技術科学大学の岡田美智男研究室(ICD-LAB)とパナソニックの共同研究で生まれた。21年10月に「Makuake」でクラウドファンディングを行い、開始からわずか6時間半で目標金額の1000万円を達成している。
弱いロボットは、あえてロボットを不完全な状態とし弱さを見せることで「周囲にいる人の優しさ、手助けをちゃっかり引き出し、機能を補完するロボット」(岡田教授)のこと。
例えばゴミ箱の形をしたロボットがゴミの周りを困ったようにウロウロしていれば、周囲の人は思わずゴミを拾ってあげたくなる。あえてロボットにゴミを拾う手段を持たせず、人との関係でゴミ拾いという機能を実現し、同時に人の気持ちにも「良いことをした」と影響を及ぼす。
ニコボはニット素材にくるまれた球に近い形状で、なでるとしっぽを振ったり、寝言を言ったり、オナラをしたりする。最初はカタコトだが、少しずつ言葉を覚え、がんばってしゃべる。スマートフォン並みのCPUを搭載し、ネットワークにも接続できるが、役に立つ機能はほぼない。
しかしクラウドファンディングでニコボを購入した人に「暮らしの変化」について聞いたころ、77%が「癒やされた」、66%が「笑顔、笑うことが増えた」と回答したという。パナソニックでニコボのプロジェクトリーダーを務める増田陽一郎さんは「一般的なコミュニケーションロボットに比べ、よりプラスの“エモーショナルな価値”がある」と判断、ニコボの市販化に踏み切った。
同時に提供する月額サービス「ベーシックプラン」は、ニコボが新しい言葉を覚えるなど日々の振る舞いをアップデートするサービス。併せてニコボの修理に対応する「ニコボクリニック」、健康診断サービス「ニコボドック」(送料箱代込み1万円)、「ニット交換サービス」(1万3000円)なども提供する。いざというときの修理やニット交換サービスが安くなる「ケアプラン」(月額550円)も用意した。
ただしパナソニックはニコボがたくさん売れる商品になるとは考えていない。「事業目論見では月額サービスのほうが成長ドライバー。ニコボをたくさん売るのではなく、ある程度の規模でビジネスとして成立するよう設計した」と話している。
これには「購入者に話を聞いたとき『サービスを長く続けてほしい』という要望が多かった」という背景があった。ソニー「aibo」(アイボ)などの前例もあり、ロボットを家族に迎えるユーザーは生産終了やサービス終了に対する潜在的な懸念を抱いている。
少々複雑にも見えるニコボのオンラインサービスの充実ぶりは、サービスを長く提供するというパナソニックの意思の表れかもしれない。
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