AMPPの最小単位は、アプリケーションになっている。オーディオミキサーは「AUDIO MIX X」、8入力の単純なスイッチャー「CLEANCUT」、ファイル再生を行なう「CLIP PLAYER」といった具合だ。
これらを組み合わせて、一定の目的にかなうようにパッケージングされたものが「AMPP SOLUTIONS」として提供される。「LIVE PRODUCER X」はワンマンオペレーションでIPライブ放送ができるシステム、「MASTERPIECE X」は従来のハードウェアスイッチャーシステムに相当する大規模配信システムだ。システム規模に応じて、パッケージングされたアプリの増減もできる。
これらのソフトウェアは、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureといった汎用クラウドでも動かせるし、オンプレミスのサーバ上でも動かせる。またGrassValleyが提供する専用ハードウェア「AMPP Edge」上でも稼働する。顧客のニーズに合わせて、どれでも同機能が動かせるのがポイントだ。
またスイッチャーオペレーションは従来のハードウェアスイッチャー、Kayenne/Karrera/Korona/KSPといったコントロールパネルがそのまま使用できる。もともとこれらのコントロールパネルは、スイッチャー本体とはIPでつながっていたため、転用が簡単だったわけだ。
GVのハードウェアスイッチャーが扱えるスイッチャーオペレーターは、クラウド化されてもそのままのノウハウで操作できるため、改めてトレーニングの必要がないのがメリットだ。
IPプロトコルとしては、AMPP Streaming、NDI、RIST(Basic Profile、Main Profile)、SRT、RTMP(S)、SMPTE ST 2022-2 / MPEG-TSをサポートしている。現行のIP伝送規格のほとんどが対応といえる。
料金体系としては、1年単位の基本契約料金があり、それにプラスして各アプリの利用時間に応じた従量制となっている。
AMPPが初めて使われたライブ中継は、Blizzard Entertainment主催で2019年にヨーロッパと韓国で始まったeスポーツリーグである。当時世界的に流行し始めた新型コロナウイルスにより、実会場での開催が危ぶまれたことから、当時まだ正式リリース前であったAMPPを使い、ヨーロッパと韓国両方にスタッフが別れて同時開催した。Blizzerd EntertaimentがAMPPのβテスターであったことから、急きょ本番での採用が決まった。
また2021年に延期された東京オリンピックでは、ライブ配信システムとしては使われなかったが、編集用の素材分配システムとしてAMPPが採用された。ファイルベースの運用は米NBCが担当したが、日本で収録した素材をAmazon USのクラウドにアップロードし、編集はヨーロッパのスタッフが行なった。時差の都合で、米国で編集するより、ヨーロッパのほうが仕事しやすいからである。
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