現在GrassValleyの製品は、カメラを除いた全ての製品が、ハードウェアとソフトウェアの両方でラインアップされている。ソフトウェアであれば、クラウド上で動作する。その全部が「AMPP」というわけだ。
ではなぜ2019年という早い段階でフルソフトウェア化できたのか。映像の世界で4KやHDRが具体的になってきたのは2017年頃だが、GlassValleyではそれ以前からすでにコンバーター製品のソフトウェア化に着手していた。これまではフォーマットコンバーターもフルハードウェアで作ってきたが、新たに解像度変換やHDR-SDR変換が増えたことで、変換の掛け合わせが飛躍的に増えた。これを逐一ハードウェアで作るより、ソフトウェアの方が将来的に拡張性が高いということで、ソフトウェア化に取り組んだのがスタートだった。
2017年発表のフルIP処理のハイエンドスイッチャー「K-Frame X」も、内部的にはコンバーターのソフトウェア技術を組み合わせて作られている。
AMPPのソリューションの中でも特に注目を集めているのが、25フレームと30フレームのライブ フレームコンバーターである「ALCHEMIST X」 だ。もともとはSnell Advanced Mediaの看板製品だったが、当時から専用ターンキーで動くソフトウェアであった。これも合併によってGlassValleyがソリューションを取得し、完全にAMPP上で動くよう移植されている。
もう1つの理由は、ソリューション全体をオープン規格や国際標準規格となっている汎用技術の組み合わせで構築したところである。例えばチームでライブ中継を行なう場合、それぞれ別の場所に存在するスタッフが全て同じタイミングで映像をモニターする必要がある。このベースには、WebRTC(Web Real-Time Communication)が使われている。これはHTMLのAPIの1つで、Webブラウザ上で動くリアルタイム会議システムとして利用されているオープン規格だ。
サポートするIPプロトコルも、SMPTE ST 2110は国際標準規格だし、NDIもRTMPもSRTもRISTもオープン規格である。
現在のGlassValleyは、ハードウェア「も」作るソフトウェアメーカーとなっている。世界的な半導体不足の中でハードウェア製造が難局を迎えるタイミングで、完全ソフトウェア化が完了したのは、映像業界としても大きい。
AMPPは、すでに米国大手放送局にも採用実績のあるソリューションだ。日本においてはまだ採用例をほとんど聴かないが、スポーツのシーズンイベントなどで、具体的な採用に向けての検討が始まっているという。同様のソリューションは日本のメーカーにもあることから、海外での採用実績をとるか、日本企業と一緒に開発経験を積むかを比較しての採用になるものと思われる。
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