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レトロRPGの世界で“アニメ聖地”を巡礼できる位置情報ゲーム 札幌市立大と大阪芸術大が開発Innovative Tech

» 2023年03月22日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2

 札幌市立大学と大阪芸術大学に所属する研究者らが発表した論文「Anisan Quest: 位置情報を含む任意データに対する レトロ RPG ゲーム風ビジュアライズ手法」は、実世界の位置情報データをレトロRPGゲーム風に変換する手法を提案した研究報告である。

 今回はアニメの聖地巡礼のデータベースを組み込み、日本全国の聖地を巡礼できるレトロRPGゲーム風ビュワーを制作した。

Anisan Questのプレイ画面

 この研究では、ファミコンで実行する初期のドラゴンクエストのようなレトロRPGゲームのフィールド構造とグラフィックス、操作性に着目し、このフィールドと現実世界のデータベースを組み合わせたユーザー体験を実装して検証する。

 今回は、アニメ聖地のデータベース化を手掛ける、自営自足プランニング(群馬県南牧村)による「2020年度版アニメ聖地データ」に対して提案システムを適応し、アニメの聖地巡礼ゲーム「Anisan Quest」を制作する。日本の領土(都道府県)を全体のフィールドに、キャラクターを操作しながらフィールド内を移動して巡礼するというものだ。陸を歩く以外にも船での移動もできる。

 フィールドは、陸地フィールドと街フィールド、祠(ほこら)フィールドの3種類がある。陸地フィールドは日本全体のマップを示す。その中に街アイコンがあり、入ると街フィールドとなる。さらに街フィールド内には祠アイコンがあり、入ると祠フィールドに移動する。祠フィールドには看板が設置してあり、そこには聖地の情報が書き記されている。

3つのフィールド

 フィールド内には実世界の聖地の場所と同じ位置に看板が立てられており、キャラクターをその看板の前まで操作することで、その位置の聖地情報を閲覧することができる。聖地情報には、聖地名、アニメのタイトル、第何話で登場したかなどの詳細が書き記されている。祠フィールド内にはいくつもの看板が設置してある場合もある。

祠フィールド内には聖地情報が書かれた看板が設置してある

 Google Mapとも連携しており、Googleストリートビューで現地の様子を確認すること、また現地のWebサイト情報ともリンクでつながっており、現地情報をサイトで確認することもできる。

 看板に書かれた聖地情報を見る以外に、フィールド全体の縮小図と現在地の表示、主要都市部に移動する魔法、全データに対する閲覧したデータの数の表示、これまでの冒険の保存と読込、マニュアルの表示がある。

 システムでは、位置情報を含むデータからレトロRPGゲーム風フィールド構造を生成するアルゴリズムを構築する。フィールドを任意定数で格子状に分割し、各データの位置情報に応じた分割フィールドにデータを格納、分割フィールドに含まれるデータが2つ以上ある場合、それらの位置情報を包括する領域を求め、領域のサイズのフィールドを新規に生成する。

アルゴリズムの流れ(黒点はデータ)

 今回は思わず探索してしまうデータベースのビジュアライゼーション手法として試みたが、今後は自治体などとのコラボなど、町おこしの用途への応用が期待できる。なおAnisan Questは英語への切り替えも可能だ。

Source and Image Credits: 藤木淳, 安藤英由樹. Anisan Quest: 位置情報を含む任意データに対する レトロ RPG ゲーム風ビジュアライズ手法. 情報処理学会インタラクション2023



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