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テスラ超長距離旅で分かった、“日本式”充電インフラの弱点 他のEVには致命的かも走るガジェット「Tesla」に乗ってます(3/4 ページ)

» 2023年03月25日 18時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

充電停止のタイミングでミスを犯してしまった

 下松SAを出発した時点でバッテリーは53%でした。エネルギー予測によると、岡山の実家までは数パーセントを残して到達できます。しかし、実家には充電コンセントがありません。その翌日は朝から墓参や親戚との会合などを予定していたので、最低でも10%以上、余裕を見るなら20%程度は充電残を確保しておく必要があります。

 そこで、岡山県に入る直前の福山SAで充電することにしました。ここの充電器も下松SA同様、40kWなので、計算上は20分も充電すればバッテリー残20%を残して実家に到達できるはずです。しかし、ここで、ちょっとしたミスを犯してしまいました。20分以内で充電停止ボタンを押しそこね、数十秒ほどオーバータイムしたのです。

福山SAで充電中。横浜を出て2000km超を走っただけあり、フロントには虫の残骸がたくさんこびりついている

 私が契約している日産の充電カード「ZEPS3」シンプルプランは、10分単位で550円づつ課金される仕組みです。つまり、数十秒であっても20分を超えたら、その瞬間にチャリ〜ンと550円が加算されます。停止ボタンを押してしまったので、もう後の祭りです。前編でも解説しましたが、スーパーチャージャーの1分単位の課金が如何に良心的で合理的なのかを痛感した瞬間でした。

充電終了後、16%残で到着と表示。グラフの垂直部分は充電したため。予想より下ぶれしているのは山陽道に入ってから終止100km/h巡航したからであろう

 結局、実家にはバッテリー残20%で到着しました。福山SA以後は、ペースを落とし80km巡航を意識したり、一般道を含むことで電費が予測より向上したものと思われます。

他社製EVも日産ディーラーの充電器を堂々と利用

 旅の最終日は、岡山での墓参や親戚との会合を済ませ、午後1時前に横浜に向けて出発しました。ただ、バッテリーは12%まで減っています。山陽道に乗る前に充電しておきたいものです。そこで、最寄りの日産サティオ店の充電器を利用しました。

 ここには、急速充電器が2基設置されています。次の休憩地として予定している新名神高速道の宝塚北SAの充電器までたどり着くためには、約20kWhを補充、バッテリー容量40%程度は確保する必要があります。結局、上限の30分では15kWhしか充電できず、待機車両がいなかったこともあり、あと10分だけ追加で充電することにしました。

日産ディーラー到着時、2機とも空いていたが早々に旧型のリーフがやってきた。その直後にも別のリーフがやってきたが、2機とも埋まっているのを見たら走り去った

 ちなみに、YouTubeの各種EVの紹介動画において、他社製EVで日産ディーラーの充電器を利用することに対し、遠慮というか肩身の狭さを口にする内容のものをいくつか見たことがあります。筆者は、他社製EVであっても、日産ディーラーの充電器を堂々と利用すればよいと考えています。そもそも、充電カードの「ZEPS3」は日産が発行しているものですし、急速充電を「ビジネス」として運用しているのですから。

 もう1つの理由は、日産ディーラーの充電器の多くは、基本的に政府の補助金を受けて設置されているからです。補助金には「利用者を限定しないこと」「充電設備が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる」といった交付条件があります。日産ディーラーの充電器のほとんどが24時間対応で、閉店後も充電用エリアに入構可能な仕組みなっているのはこのためです。

 結局、日産ディーラーで約40分間の充電を行いました。ここでEVの弱点がもろに出た格好です。というのは、この40分間はディーラーの立地環境の関係で、単に車内でスマホを見てボーッと過ごすだけの、無駄な時間に終止したからです。高速道路のSAや商業施設での充電であれば、食事、休息、買い物といった「意味ある時間」として費やすことができます。

 今から考えると、さっさと高速道路に入り、何ヵ所かのSAに立ち寄りながら、休憩を兼ねて継ぎ足し充電をすればよかったのかもしれません。このあたりの判断が難しいところでもあり、EVにおけるエネルギー補充の欠点が露呈した形です。ガソリン車であれば5分で6〜700km分の補充が可能です。

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