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壁を見るだけで“壁の先にある物体”を脳活動から画像化 英国の研究者らが技術開発Innovative Tech

» 2023年04月20日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2

 英グラスゴー大学に所属する研究者らが発表した論文「Computational Ghost Imaging with the Human Brain」は、見えない向こう側の物体の反射光を見た脳活動から、その物体を画像として再構築するブレインコンピュータインタフェース(BCI)を提案した研究報告である。物体は壁に隠れて見えないにもかかわらず、反射光を見た際の脳信号を分析することでリアルタイムに物体の画像化が行える。

実験時のセットアップ

 壁に反射した光から見えない向こう側にある隠れた物体の画像を計算で再構築する手法は、これまでにも報告されている。向こう側の光源の照明パターンを変化させ、対応する光強度の値を検出することで物体の画像を再現する手法だ。

 従来はカメラなどで光量値を検出していたが、今回は人間の視覚で見た際の脳活動から画像を再構築するアプローチを試みる。具体的には、壁の向こう側に対象の物体と光源(プロジェクタ)を設置し、明滅する光パターンを物体に照射して白い表面である壁に反射させ、その壁を参加者に目視してもらう。

 反射光の強度は、参加者の視覚野から検出し、1つの電極を備えたEEGヘッドセットで脳波から電気信号(定常状態視覚誘発電位:SSVEP)として捕捉される。この信号は、ラップトップで処理され、隠された物体の画像を再構成するアルゴリズムによって出力される。

脳活動から「7」という数字を再構築した画像結果

 実験では、「T」や「7」のようなアルファベットや数字1文字を物体としてプロジェクタで照射する。壁に反射する光を見た参加者は、リアルタイムに脳波が読み取られコンピュータ処理により画像として見た物体を出力する。実験の結果、ノイズは多いものの何となくアルファベットや数字を知覚できるレベルでの出力画像を確認した。

Source and Image Credits: Gao Wang and Daniele Faccio. Computational Ghost Imaging with the Human Brain.



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