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京大附属病院、3Dプリンタで神経損傷の治療に成功 切れた神経を回復できるように

» 2023年04月25日 12時15分 公開
[ITmedia]

 京都大学医学部附属病院は4月24日、バイオ3Dプリンタを使った末梢神経損傷の治療に世界で初めて成功したと発表した。従来の手法に比べて神経再生が良好で、副作用や合併症の発生もないという。

photo 3Dプリンタで神経導管をプリントし移植

 治験では、腹部の皮膚から採取した細胞を培養し、サイフューズ(東京都港区)製のバイオ3Dプリンタで「神経導管」をプリントした。神経導管は神経のネットワークを構成する「軸索」を伸長させる管のこと。これを損傷箇所に移植することで、軸索の再生に成功した。

 3人の患者に適用し、12カ月に渡り観察を続けたが、患者全員で知覚神経が回復し、副作用もないことから、安全性と有効性が確認できたとしている。

 現在、末梢神経が損傷した場合の治療法としては「自家神経移植」が主流となっている。患者の健常な神経を採取して損傷箇所に移植する手法だが、神経再生が十分でない、採取した部分にしびれや痛みが残るなどの問題があった。

 京都大学医学部附属病院は「末梢神経の損傷で思うように手が使えなくなり苦しんでいる患者さんや、自家神経移植で痛みが残ってしまった患者さんは多い。今回の結果で、神経導管移植が選択肢の一つになり、患者さんの社会復帰が可能になる」としている。

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 今後はサイフューズ主導で再生医療等製品としての実用化に向けて開発を進めるとしている。

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