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Evernote vs Notion デジタルのメモ帳か、チーム共有のドキュメント管理ツールかSaaS対決(2/4 ページ)

» 2023年04月28日 18時29分 公開
[武内俊介ITmedia]

Evernote:紙のノートをデジタルに最適化

 Evernoteは08年にリリースされた10年以上の歴史を持つサービスだ。初代CEOのフィル・リービンは親日家であり、リリースから2年後には日本語版の公開と日本法人を設立しており、日本国内でもユーザーも多い。

 これまでにCEOが2回交代しており、アプリが非常に使い勝手が悪くなったり、別サービスを開発したりするなど迷走した時期もあったが、近年は創業時の理念に立ち返ったシンプルなアプリケーションに戻り、ストレスなく使えるようになっている。

 Evernoteはその名前の通り、紙のノートをデジタルに最適化した形に進化させたサービスである。ノートはメモをとったり、アイデアを書いたり、資料を貼り付けたり、といった多種多様な使い方ができる。いつでもどこでもサッと取り出して、ありとあらゆることをEvernote上に記録していけることがEvernoteの魅力である。

Evernote

 その機能を追求する上で、Evernoteの特徴の1つがオフラインで、あらゆる端末で使えるという点だ。Evernoteがリリースされた当初は現在ほどは通信環境が整っておらず、外出先で当たり前のようにインターネットにアクセスできなかったという事情もあるだろう。パソコン、スマホ、タブレットそれぞれにインストールされたアプリは、電波がないオフライン状態でも使用できるようになっている。

 地下鉄でも携帯電話が使えるようになり、外出先ではゲストWi-Fiが提供されるのが当たり前になったが、飛行機や新幹線などの長時間の移動中には安定した通信環境を確保することは難しい。Notionも含めて、近年のITサービスはオンラインで使うことを前提としているものがほとんどであり、オフライン状態では何もできないのに対して、オフラインでも記録ができるEvernoteはノートとしての役割を果たしてくれる。

 スマホやパソコンに用意されているメモ機能で必要十分だという人も多いかもしれないが、移動中に思いついたちょっとしたアイデアから会議資料の下書き、気になったWeb記事のクリッピングまで、ありとあらゆるものをEvernoteに集約することが重要である。

 Evernoteの料金体系は、保存したデータの総量ではなく毎月どれぐらいアップロードできるか(無料版は月間60MB、パーソナルプランは月間10GB、プロフェッショナルプランは月間20GB)になっているため、長年使い続けるほどに手放せないノートになっていく。

有料プランにすると、月間アップロード容量が増加する

 Evernoteの2つ目の特徴として検索機能の強さがある。情報が紙であるか、デジタルであるかの最大の違いは検索の可否にあるともいえる。デジタル上で情報を保存することで、必要な情報にたどり着きやすくなる。ただし、それはEvernoteに限らず、あらゆるデジタル上のドキュメントに共通する特徴である。

 多くの人がGoogle検索を何気なく使っているので「検索で必要な情報を瞬時に表示する」ことが当たり前だと思っているかもしれないが、自社内の特定のドキュメントを探し出そうとすると、かなり構造的に情報が整理されていない限りは目的の情報にたどり着くことは非常に難しい。そして、雑多な情報を記録するノートは、情報の構造化からは最も遠い場所にある。

 そこを埋めるのがEvernoteの検索機能である。筆者は専門家ではないので、詳細な仕組みまでは説明できないが、Evernoteに記録した情報は、タグを付ける程度であまり整理しなくとも、なんとなく検索すれば見つけることができる。OCRにより保存した画像の文字情報も検索対象になるし、有料版であればPDFやWordなどの中身まで検索してくれる。

 いつでもどこでも何でも保存することができて、保存したものを検索でいつでも見つけることができる。こういう特徴をEvernoteでは「第二の脳」と呼んでいる。記憶や検索能力においては人間の脳はとっくの昔にテクノロジーに完敗しているが、その部分をEvernoteが補完してくれるというコンセプトである。

 Evernoteは使えば使うほど、本当に自分の記憶の一部を肩代わりしてくれる存在になるという珍しいツールなのだ。

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