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「pixivのイラストを非公開にしました」 フォロワー数十万の“有名絵師”から発表相次ぐ AI巡る対応に不信感

» 2023年05月08日 12時37分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 「pixivに投稿したイラストをいったん非公開にしました」──5月6日ごろから、Twitterで数十万のフォロワーを集めるイラストレーターの間で、こんな発表が相次いでいる。背景にあるのは、画像生成AIへの対応を巡るpixivへの不信感だ。

photo pixivへの投稿を非公開化したイラストレーターの作品一覧

 例えばTwitterフォロワー数24万人超のイラストレーター・あかもくさんは7日、pixivへの新規投稿を控える他、過去に投稿したイラストを全て非公開にしたとTwitterに投稿。「抜本的なAI対策とそれに伴うpixiv社の会社としての意思が明確になるまで」継続するという。

 他にもフォロワー数64万人超のイコモチさん、約13万人の皐月恵さんなど、複数のイラストレーターが同様の方針を発表している。いずれも、pixivに投稿したイラストを勝手にAIに学習されることを危惧しての対応という。

 イラストレーターの対応について、SNSではさまざまな反応が出ている。「他人のふんどしで相撲を取る者を減らすためにも応援したい」という声もあれば、「pixivに限らず、インターネット上に公開している時点で学習に使われるリスクがある」などと、単一のプラットフォームで非公開化してもあまり意味がないと指摘する声もあった。

 非公開化が進んだきっかけは、Webサイトから特定のデータを自動で集める技術「スクレイピング」でpixivのイラストを集め、AIでのイラスト生成を効率化する方法がSNSで話題になったことだ。

 話題になったのは、あるイラストに似た画像を生成できるプロンプト(いわゆる“呪文”)を、元の画像から作成できる技術を使った手法だ。まず、大量に集めたイラストからプロンプトを生成。手に入れたプロンプトや、少量の画像をAIに追加で学習させて生成結果をある程度コントロールする「LoRA」を併用し、同じキャラクターの絵をさまざまな構図や服装で量産するというものだった。これにより、イラストレーター側には「pixivはAI学習を防ぐ対策を取っていない」という印象が広がり、今回の動きにつながったようだ。

 とはいえpixivは「クローラーなどのプログラムを使って作品を収集する行為」をガイドラインで禁じている。つまり、スクレイピングはそもそも規約違反というわけだ。一方で、現状では対策が不十分として、スクレイピング対策などをより充実させてほしいという声も見られる。

photo pixivのガイドライン(公式サイトから引用)

 しかし、pixiv以外のプラットフォームにもイラストを投稿していた場合、それも意味が薄くなる。イラストレーター側も承知のようで、「pixivさんにAI対策をお願いしたいという意思表示で」などと、あくまで対策の強化を求める意思表示としてイラストを非公開化したという人もいた。

 なおpixivはすでに、ガイドライン・規約を改定する方針を明かしている。当初は5月末までに実施予定だったが、問い合わせが多かったとして、2日に改定内容の一部を予告した。「特定のクリエイターの画風・作風を模倣した作品発表を反復・継続し、当該のクリエイターの利益を不当に害する」行為や「特定のクリエイターの画風・作風を模倣した作品発表をほう助するツール等を配布・販売し、当該のクリエイターの利益を不当に害する」行為などを制限する予定という。

【追記:2023年5月6日午後4時59分】投稿の非公開化が進んだ背景について追記しました。

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