楽天モバイルがKDDIとのローミングを強化し、新プラン「Rakuten最強プラン」を打ち出した。徐々にローミング契約を終了し、自社回線への移行を進めてきた楽天に、何が起きたのか。5月12日に行われた楽天グループの決算会見で、三木谷浩史会長が話した狙いをまとめた。
「料金では楽天モバイルが圧倒的、ただし通信品質では6位。解約理由の圧倒的トップも通信品質だ」
KDDIローミングの導入理由として、三木谷氏が挙げた理由がこれだ。これまで自社回線の急速な強化を誇り続けてきた同社だが、自社回線の品質がユーザーに不評だと改めて認めた形だ。
「基地局はすごい勢いでやってきた。未曾有の勢いで作ってきた。人口カバー率98%。ただ残りのところに少し壁があると思っていた」
当初の計画では、これからの1年間をかけてカバレッジ改善を進める予定だった。これをKDDI回線を借りることで、一気に他社並みにしていく。
「都市部以外のところ、地下鉄、ハンドオーバーが課題だった。この3つとも、新ローミング契約で解決できる」
ハンドオーバーは、楽天モバイル回線とKDDI回線の切り替えのことだ。これまでKDDI回線から楽天モバイル回線に戻ってくるときに、多少のラグがあったという。新ローミング契約では「これもほぼシームレスになる」という。
気になるのはローミングコストだろう。当初のローミング契約では、支払い料金が業績を圧迫し、できるだけ早期にKDDI回線から自社回線に切り替えるという方針で進めてきた。今回の新ローミング契約の詳細については明かしていないが、ローミング費用を支払っても削減できる設備投資費用のほうが大きいという。
「新ローミング契約が財務の安定性に貢献するという構造だ」
しかし、他社回線を借りて通信品質を確保しても、それはMNVOと似たようなモデルでしかない。自社回線設備投資の設備投資を進めたくても、財務的にこれ以上の資金調達も難しく、苦肉の策としての新ローミング契約ではないかという見方もある。
一方で、プラチナバンドが獲得できるまでペースを落とし、ローミングしつつ緩やかに基地局を整備していくという方針転換だともいえる。時期は明確にしていないものの、新KDDIローミングの先には、「プラチナバンド+ASTスペースモバイル(衛星モバイル通信)」への移行というロードマップが描かれている。いずれにしても、大きな方針の変更だともいえる。
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