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「書店ゼロ」の市町村増加 “動画全盛”で、子どもの国語力はどうなる?小寺信良のIT大作戦(1/4 ページ)

» 2023年05月18日 10時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 筆者は1981年まで宮崎県宮崎市に住んでいたが、市内に本屋はかなり多かったように思う。近所に小さい書店が2箇所、繁華街に大型書店が2店舗あったほか、4つあったデパート内にも大きな本屋が入っていた。子どもの頃からSFと推理小説マニアだった筆者は、目的の本が見つからないとあちこち本屋をはしごして、マイナーな小説を探したものだった。

(本屋のイメージ画像)

 上京してからも、渋谷、新宿、神田、お茶の水、池袋など、学生がうろうろしてそうな街の本屋には大抵足を運んだ。今考えれば当時の本屋は、サロン的というか、今日のネットサーフィン的なものだったように思える。用はなくてもなんとなく本をブラウジングしていればそれなりに間が持つし、大抵興味のありそうなものが見つかる。文庫本など当時は500円もしなかったはずだ。ケータイもないので、友人との待ち合わせにも時間が潰せる本屋を使ったものである。

 出版文化産業振興財団(JPIC)による調査では、2022年9月の段階で書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村は全国で26.2%にものぼるそうである。その内訳を見てみると、さすがに市レベルでは2%と少ないが、町レベルでは37%、村レベルでは89%となっている。ただ村レベルでは、減ったというより、もともと無かったところも相当あるだろう。

 筆者は2019年に宮崎市へ戻り、37年ぶりの変化を楽しみつつ暮らしているところだが、当時あった本屋はことごとく存在しない。4つあったデパートのうち3つが撤退しており、街の様相も相当変わってしまっている。

 驚いたのは、息子の高校の教科書を買った時だ。当時市内にあった大型書店は郊外の本店兼倉庫を残すのみとなっており、そこまで車で買いに行かなければならない。さらに副教材はその書店でも扱っておらず、別の書店の倉庫に買いに行く羽目になった。

 考えてみれば参考書や入試過去問集などはまだまだ電子化されておらず、紙だ。1〜2年後にはこうしたものも買わねばならないが、リアル店舗がほぼなき今、中身も見ずに数ある類似書の中からAmazonで買うという事になる。

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