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「書店ゼロ」の市町村増加 “動画全盛”で、子どもの国語力はどうなる?小寺信良のIT大作戦(2/4 ページ)

» 2023年05月18日 10時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

すでに90年代から衰退は始まっていた

 書店の減少を、電子書籍の普及に結びつける論調もあるところだ。とはいえ、出版される書籍のすべてが電子化されているわけではなく、種類という点では紙の書籍の方がまだ潤沢である。コミックはすでに電子が紙を抜いたとされているが、これは1冊読んだら次がリコメンドされるとか、シリーズまとめ買いといった、紙の書籍ではあまりなかった買い方の変化によるところが大きい。

 Amazonのような、紙の書籍を売るECサイトが普及して長い。ECサイトは検索性がよく、目的の書籍がすでに決まっている場合は、リアル本屋よりも断然早い。またレア書籍も中古に至るまで検索できる。

手軽に書籍が買えるアマゾンのECサイト

 一方でリアル書店の良さは、その検索性の悪さゆえに顧客を引きつけていたところがある。書棚の作り方に独自のこだわりがあり、ジャンル分け、テーマ分けがしっかりされていれば、ぶらぶら見ているだけで思わぬ書籍との出会いがあった。また「島」と呼ばれるエリアの構成や、何を平積みにするか、店員さんが独自の発想で自由に書き記すポップの面白さみたいな、本読みカルチャーが生み出される現場感があった。

 良い本屋は人を集めるし、人が長時間滞留する。その人が周辺に流れることで、周囲の店舗も潤う。ある意味本屋は、かつての商店街・アーケード街の中で共存共栄状態にあったのだろう。

 ネットの動画配信サービス普及前の90年代から2000年代には、レンタルビデオと書店のハイブリッドチェーンが多く存在した。しかし品揃えは流行の雑誌や週刊誌が中心であり、コンビニの書棚の大型版といった風情であった。これならむしろ古本屋のほうがマシである。一時そうした店しかない街に住んだことがあるが、本当に「本読み文化の危機」を感じたものだった。それらはレンタルビデオ事業の衰退とともに、本屋事業もろとも消滅していった。

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