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セキュリティトークンのデジタル通貨決済、検証結果まとまる どんなメリットが?

» 2023年05月31日 15時10分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 野村ホールディングス、大和証券グループ本社、BOOSTRY、ディーカレットDCPの4社は5月31日、セキュリティトークン(ST)取引におけるデジタル通貨決済の検討結果を公表した。デジタル通貨決済が実現すると、これまでの株式や債券などで必要とされた清算機関が不要となり、自動化された即時決済が可能になる。

デジタル通貨フォーラムのST-Coin分科会にて検証に参加した14社

 STとは、有価証券(セキュリティ)をトークン化しブロックチェーン上に乗せたもの。2020年5月に施行された改正金商法で定義され、事業化が可能になった。不動産のST化を中心に急速に市場が拡大している。

プログラムでDVP決済 低コストで即時

 株式などの有価証券においては、取引所などで取引が約定したあと、証券の受け渡しと代金の受け渡しを同時に行う、いわゆる「DVP決済」を、日本証券クリアリング機構(JSCC)のような清算機関が担っている。

株式の場合の清算の仕組み(東京証券取引所)

 一方でSTの場合、代金もデジタル通貨を使うことで、ブロックチェーン上で動作するプログラム(スマートコントラクト)を用いてDVP決済が行えることが期待されている。

 STのデジタル通貨決済が実現すると、清算機関が不要になり、業務コスト、送金コストが低下するほか、取引相手の倒産などで取りはぐれるリスクを回避できるようになる。また株式の場合で3営業日(T+2)かかっている受け渡しの即時化や、利金の高頻度自動分配なども可能になる。

STのデジタル通貨決済を行う場合の業務フロー例

 今回の検討では、BOOSTRYのブロックチェーンプラットフォーム「ibet for Fin」と、ディーカレットDCPの仕組みを用いて発行予定のデジタル通貨「DCJPY」を用いて、双方のスマートコントラクトなどを利用して決済を行う検証を行った。ビジネス面、技術面、法律面での検証を行い、基本部分に問題がないことを確認するとともに、実現に向けての課題を洗い出した。

 検証には、STの二次流通市場を提供する計画の大阪デジタルエクスチェンジも参加しており、証券会社間の相対取引のほか、取引所取引についても検討している。ただし、DCJPYが発行時期未定なこともあり、実際のサービスとしての実現時期は未定だ。

 また今回の検証は、BOOSTRYのibetとDCJPYを前提としており、国内で利用例の多いSTプラットフォーム「Progmat」や、この春に改正資金決済法で可能となった他のステーブルコインについては想定していない。今後、日本銀行が発行する可能性もあるCBDC(中央銀行デジタル通貨)への対応も含め、STのデジタル通貨決済はホットとなっていきそうだ。

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