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テレビの“テロップ制作”にもクラウド化の波 業界最大手が挑む高き壁小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/3 ページ)

» 2023年06月22日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

コロナ禍で何が起こったか

 現在は新型コロナウイルスに関するレギュレーションもずいぶん緩くなっているが、2020年から2022年ごろまではずいぶん厳しかった。感染すれば本人は発症翌日から7日間出勤停止、家族も自宅待機となり、職場で濃厚接触者と認定されれば3日間は出勤できなかった。

 キー局クラスの放送局ともなれば、CGセンターには大部屋にVWS端末がずらりと並び、30人〜40人ほどのスタッフが作業している。誰か1人が感染すれば濃厚接触者認定されやすい環境にあった。そこでマシンごとに部屋を分けたり、リモートデスクトップで自宅から操作するなどの方法が試みられた。

 ただ、放送局は情報漏えい防止のため、かなりセキュリティに厳しいネットワーク環境にあり、簡単にリモートデスクトップで入れるようにはなっていない。また60分番組につきおよそ1000枚超ともいわれるテロップ作成に対して、十分な作業スピードを確保するのが難しかった。

 コロナ以前から「働き方改革」はテレビ局内でも模索されていたこともあり、以前から編集やテロップ作成もクラウドへの移行やアウトソーシングが検討されてきた。それがコロナ禍によって、より現実的かつ即効的な方法論への転換が始まった。

 日本テレビ系列の技術会社である株式会社日テレ・テクニカル・リソーシズ(NiTRo)では、2021年4月という早い段階でVWSベースのクラウドを利用したテロップ編集システムの運用を開始した。

 これはかねてよりNiTRoが編集システムのクラウド化を構築する中で、テロップ制作も必要ということから、運用ノウハウや絶対条件などをディスカッションしつつ、朋栄が開発したものである。ただこれはかなりカスタムのシステムである。この開発経験をベースに、汎用システムとして新たに開発を進めているのが、「VWS on ceacaa」である。

 ceacaa自体は2022年11月よりサービス提供が開始されているクラウドコンソールで、セキュアなデータ送受信を実現しながら、各種アプリケーションをクラウド上で動作させる。ユーザーはWebブラウザを使ってceacaaへログインし、AWSのEC2上で動作する仮想PCへアクセスする。この仮想PC上ではPremiere ProやEDIUSといった編集アプリケーションが動作するが、それと同じようにVWSも動作させようというわけだ。

ceacaaの構成

 「VWS on ceacaa」はまだサービスを開始していないが、6月運用開始を目標として開発が進められている。

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