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インタビュー
» 2023年06月28日 18時00分 公開

「GAFAが国のデータを独り占めしているという批判もあるが……」 日本の公共クラウド活用、AWSの目にはどう映る?(2/3 ページ)

[本多和幸ITmedia]

他社クラウドとの差別化は? 公共分野での戦い方

――公共向けクラウドビジネスにおいて、AWSが他のクラウドベンダーと差別化できる点を教えてください

宇佐見 AWSの公共向けビジネス部門は、米国の情報機関での採用をきっかけに2011年に発足しています。他のクラウドベンダーと比べて歴史があるというのは一つの大きなポイントです。

 ただ、競合ベンダーを意識するという発想はそんなにありません。AWSとしては、クライアント視点でものごとを見ることを徹底しています。クラウドの市場そのものも歴史があるので、その中でずっとビジネスをやってきたベンダー各社のサービスは、一見似ているようでも競合のコピーではない。

――では、顧客視点を徹底するに当たって、具体的にどんな取り組みを進めているのでしょうか

宇佐見 2022年、公共分野の課題解決に取り組むスタートアップ向けの支援プログラムを日本でも立ち上げました。これはまさにクライアントとの対話が大きなきっかけになりました。

 多くの地方自治体が、さまざまな社会課題の解決にスタートアップの力が有用なのではないかという期待を持っています。一方で、スタートアップ側は画期的なアイデアがあっても自治体にどう売り込んだらいいのか分からない。公共分野は調達手続きも複雑で、ベンダー側にとっては厄介です。

 そこでAWSの支援プログラムでは、スタートアップに対するビジネス的・技術的支援だけでなく、公共の課題解決に取り組むコミュニティーに参加できる環境も用意しました。課題を持つ自治体とスタートアップの連携を加速させる狙いです。

――22年には、AWSが浜松市と連携してスタートアップや地域のクラウドエンジニアコミュニティーの発展を促す取り組みを進めるという発表もありました。この取り組みも同様の狙いということでしょうか

宇佐見 浜松市の事例もそうですが、クライアントである地方自治体と密にコミュニケーションを取りながら試行錯誤しています。米系の大手クラウドベンダー各社が、何かすごい戦略の下に日本を侵略しようとしていると思われているかもしれないですが、現実はそうではありません。

 繰り返しになりますが、データの民主化こそが日本の大きな課題と捉えています。そのために先進のテクノロジーをどう浸透・定着させていくのかを危機感を持って考え、さまざまな施策を実行しているということです。

「人材がいない」ガバメントクラウドで浮き彫りに どう受け止める?

――地方自治体などではクラウドに詳しい人材の不足も課題になっていると思いますが、人材育成についてはどのように考えていますか?

宇佐見 やはりガバメントクラウドが実質的に必須課題になったので、公共人材もクラウドを学ばざるを得ないというのが正直なところではないかと思います。ガバメントクラウド先行事業や先進自治体での積極的なクラウド活用などが進み、「様子見をしている段階ではなくなった。このままではまずい、自分たちもちゃんとやらないと」というような意識が広がっていると感じます。

――では、AWSは具体的にどのような形でこの課題に取り組んでいるのでしょうか

宇佐見 例えば、地方自治体専用のセミナーを22年6月からオンラインで毎月定期的に実施しています。23年3月までで500人の行政職員の方が参加しています。

――自治体に対するデジタル人材育成支援については、要望があればオーダーメイドで対応するのでしょうか

宇佐見 全てのケースで個別対応すると表明しているわけではないのですが、やはり自治体ごとに課題は異なります。住民から見ると既存の行政サービスは窓口単位で分断されていることが多いので、もっと横で連携してほしいという潜在的な要求はあるわけですが、プライバシーとのバランスをどう考えるかなど、自治体ごとにサービスの設計思想は違います。支援する立場としては、そこをしっかり理解しなければならない。

 どういう人材をどのくらいの割合で増やしていきたいとか、どんなパートナー企業とどう付き合いたいかとか、こんなアイデアを持っているスタートアップと連携したいとか、課題はさまざまです。支援の座組についても、それぞれの自治体が考える最適な形があります。それに沿ってAWSのサービスと、連携する企業やサービスなど「エコシステム」の力を生かした支援をしていく方針です。

――自治体によっては内部の人材育成だけでなく、外部との連携も視野に入れた上で、デジタル関連施策やDXを推進する体制を考えているわけですね

宇佐見 一口にデジタル人材と言っても、どんな能力を求めているかは組織によって異なります。自治体側は従来型のITエンジニアをベンダーからスカウトしたいという発想ではなくて、社会課題の解決に貢献できる、DXの本質を分かっている人材を必要としています。

 実はそういう人材にも種類があります。一つは技術への深い見識をベースに「この技術を使えばこういう課題が解決できるのでは」という発想を持てる人。もう一つは業務や政策の課題を設定して、そのソリューション構築のための要求を技術者側に出せる人ですね。とても難しいことですが、両者がそろい、うまく連携できる環境をつくることが重要です。

――そこまで含めてAWSが支援するのは、すごく難易度が高いように思えます

宇佐見 先ほど自治体ごとに課題は違うと申し上げた通り、やはり松竹梅でメニューを用意して対応できる世界ではありません。例えば課長クラスにすごくセンスが良くてDX(デジタルフォーメーション)の理解度が高い人材がそろっている自治体もあれば、管理職への基礎的な啓発から始めなければならない自治体もあるかもしれません。

 これまでの行政は、誤りのない確実なサービスを提供することの優先順位が高い組織でした。しかし現在はクリエイティビティーを備えた人が自ら改革を先導する組織になることが求められていると思っています。そういった素養を持った人を発見し、彼らの考えていることを形にする支援をしていくことが、座組を作るときにも大事だと考えています。

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