AIと著作権の関係については、最近も文化庁が関連講演映像と資料を公開している。
主だったポイントをまとめると、AIと著作権の関係においては、「AI開発・学習」(以下単に学習と呼ぶ)段階と、「生成・利用」(以下生成と呼ぶ)段階の2段構えになっている。
学習段階においては、2018年に改正された30条4により、著作権は権利制限される。つまり、権利者の許諾なく、著作物を自由に使用してよいということである。ただし書きとして、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は権利制限されない。
もう1つ30条4のタイトルとして(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)という文章がある。逆に言えば、「享受」を目的としていれば30条4は適用されないということである。ここで言う享受とは、平たく言えば人間が見て楽しむなど、通常の著作物利用目的に近い場合と考えられる。
「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」も「享受を目的とする場合」も、権利者に無断で学習はさせられないが、権利者から許諾がもらえれば学習させられるという意味でもある。
一方生成プロセスにおいては、AIの利用いかんに関係なく、通常の場合と同様に判断されるという。その判断の根拠となるのが、「類似性」と「依拠性」の2段構えでやる、となっている。
依拠性(いきょせい)とはあまり聞き慣れない言葉だが、依存の「依」と根拠の「拠」と考えれば多少は分かりやすいかもしれない。つまり生成されたものが、既存の著作物にどれぐらい寄りかかっているのか、ということである。
AI生成物が著作権侵害であるかは、この2つを満たす必要があり、どちらかが欠ければ侵害ではない、という考え方である。また個人で楽しむためだけ(ネットなどに公開しない)に出力する場合は、「私的使用のための複製」に該当するため、権利侵害は問われないという立て付けである。
以上をふまえていったん整理すると、筆者の理解するところでは以下の図のような構造になる。
この構造を元に考えると、日本芸能従事者協会のアンケートで寄せられた侵害事例は、ずいぶん整理されてくるはずである。
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