さすがに500件以上の事例は全部把握できないので、上から150事例ぐらいの中から、主だったところを調べてみる。
このタイプの、学習されること事態を問題視している意見は複数みられる。ただ30条4によれば、学習させることは権利制限されているので、ここはたとえ不愉快であっても止められないところである。
ただ日本が特に自由なのであって、国外ではまた事情が違うため、ワールドワイドでなんらかの統一ルールは必要なのではないかという気がする。つまり、「AIに学習されない権利(自由)」は保証されなくていいのか、という話である。これは法的にやると時間がかかるため、技術仕様としてAIによるクローリングを拒否するためのメタデータの記述式を決める等の動きは、今後あり得るかもしれない。
これは上の図の「画像(著作物)指示」によって出力した生成物が、販売されている例である。これは私的複製にもあたらず、ストレートに侵害事例として「類似性」と「依拠性」で判断するという事になるだろう。
これは結構難しいところに踏み込む可能性のある話である。出力結果に「類似性」と「依拠性」があればアウトという事になるわけだが、またこれにより発注を失っているので、同時に30条4のただし書き「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するようにも見える。
だが結果が違法だからといって、学習段階の権利制限を違法にできるのか。学習した段階では、将来的な出力が違法になるかどうかが分からないので、結果が違法だからタイムマシンでさかのぼって学習段階を違法にするという解釈は、まず無理筋だろう。
もう1つの考え方としては、この学習が「LoRA」を併用している場合である。LoRAは、AIによる出力を調整するために、利用者が新たに画像を追加学習させる手法で、これを用いることでキャラクターの顔を同一人物と認識できる程度に一定範囲内収めたり、あるいは背景を一定のシーンに固定したりできる。
これは6月上旬に内閣部から公開された資料に言及がある。
この中に「例えば、3DCG映像作成のため風景写真から必要な情報を抽出する場合であって、元の風景写真の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような映像の作成を目的として行う場合は、元の風景写真を享受することも目的に含まれていると考えられることから、このような情報抽出のために著作物を利用する行為は、本条の対象とならないと考えられる」
という一文があったことから、結果から逆算して学習時の権利制限規定を外せるのか、という解釈もあったようだ。だが筆者が読む限り、これはLoRAによる追加学習のことのように読める。
上記の筆者の図をもう一度振り返ってみていただきたいのだが、LoRAは学習であると同時に生成させるための指示でもある。これに学習行為が含まれるとはいっても、30条4の範囲で処理はできませんよ、という意味なのだろうと思う。
これまたムカつく物言いである。作風・画風はアイデアの一種と皆されており、著作権法では保護されないのは事実である。その8割程度の類似を客観性を以てどれぐらい主張できるかにもよるだろうが、そこまでの要素が8割程度似ているのであれば、それは作風の範囲では収まらないように思える。
具体的には司法判断に委ねることになるが、文化庁の議論では「AI利用者の側が、ものと著作物がAI生成物の作成に寄与していないことを立証すべき」という見解も出ていることから、生成者側にも証明責任が発生することになるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR