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SaaSビジネス研究所
インタビュー
» 2023年06月30日 13時00分 公開

広がる「SaaSのためのSaaS」 “ゴールドラッシュのつるはし”ビジネスの最前線新連載・SaaS for SaaSの世界(2/2 ページ)

[武内俊介ITmedia]
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カスタマーサクセスの重要性 サブスク管理における役割は

 サブスクリプションの契約管理・請求管理を語る上で、外せない話題がもう一つある。それは導入支援体制だ。契約を継続して使い続けてもらうことが重要なSaaSのビジネスモデルにおいて、「カスタマーサクセス」(契約後の顧客に能動的にアプローチして成功体験の実現を支援すること、以下CS)は非常に重要だ。SaaSの広がりとともに日本でもこの概念が浸透してきている。

 この傾向はサブスクリプションの契約管理・請求管理サービスでも同様だ。月額固定の利用料、利用に応じた従量課金、階段状の課金モデル、さらにはこれらを複合的に組み合わせたものなど、プライシングモデルは各社各様。「販売の自由度」を担保するために、契約管理・請求管理サービスはあらゆる要望に応えられる基盤として機能しなければならない。一方で、自由度が増えるほどに設定しなければいけないパラメータは増え、活用の難易度は上がっていく。

 その溝を埋めるのがCS担当者の役割である。SaaS事業者の料金プランや個別対応の状況などを詳細にヒアリングした上で、3〜6カ月間の移行プランを作成。自社サービスが確実に契約管理・請求管理の基盤になるように支援していく。

 利用企業が増えていくに従って、サービス側では想定しなかったような料金プランを採用している企業も出てくる。そのとき、単にその料金プランに対応する開発要望を挙げるだけでなく、どのような意図を持ってその料金プランを採用しているのか、その料金プランではどのようなオペレーションが発生するのか、といった顧客の真意を理解するのもCS担当者の重要な役割といえるだろう。

 CSに力を入れているのはScalebaseでも同様という。「CSにはいくら投資しても必ずペイすると信じている」と伊藤CEO。契約管理・請求管理の基盤となるScalebaseのようなSaaSは、一度導入すると簡単には乗り換えできない。

 一方で、SaaSのプライシングというのはトライアンドエラーが必要不可欠な領域だ。CSを充実させ、ビジネス提供基盤として求められる柔軟性を発揮することが、契約管理・請求管理の分野では必須なのかもしれない。

SaaS for SaaS活躍の場は「車輪の再発明」領域?

 「車輪の再発明」という言葉がある。誰かがすでに生み出した何かを自分で生み出そうとして時間を無駄にする、という意味だ。企業のバックオフィスにおいて複雑なExcelなどで管理されている業務領域では、まさに車輪の再発明が発生している可能性が高い。

 SaaS for SaaSが活躍するのはまさにこの領域である。ニッチかつ「うちの○○は特殊」と担当者が語るような個別性が高い課題。一見すると個別カスタマイズに不向きなSaaSでは対応が難しいように見えるが、課題の本質を理解し、抽象化した上でそれらを機能にまで落とし込むことができれば、簡単にはまねできない独自機能を提供するSaaSを構築することができるはずだ。

 スマホが普及したことでアプリマーケットが生まれ、AWSなどのクラウド基盤が発展したことで新しいSaaSの開発が容易になるなど、競争の舞台は時代とともに移り変わる。それに応じて必要とされるサービスも変わってくる。

 本連載ではSaaSが普及してきたからこそ発展してきたSaaS for SaaSの世界を、今後も掘り下げていく。普段はあまり注目されることのない裏方の世界ではあるが、サービスを開発する上での着眼点や独自のプロダクト戦略などから、自社の事業やサービスに生かせるヒントを見いだしてもらえれば幸いだ。

執筆者 武内俊介 株式会社BYARD代表取締役、税理士

 

金融の企画部門、会計事務所、ベンチャーの管理部門を経て、税理士・業務設計士として独立。複数社への業務の再構築とITツールの導入支援を提供した後、株式会社BYARDを創業し、業務設計プラットフォーム・BYARDを開発・提供している。


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