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京セラが“超ニッチ商材”をメタバースでお披露目 その狙いとは?(1/3 ページ)

» 2023年07月07日 16時00分 公開
[山川晶之ITmedia]

 移り変わりが激しいテクノロジー分野で、ここ数年注目されているのが「メタバース」だ。特に、米Facebookが社名を「Meta」に変えた2021年以降、いろんな場所で目にするようになった。

 ただし、その言葉を聞いて「なんだバズワードか」と感じた人は正直多いだろう。1カ月ほど前に「メタバース事業、9割が事業化に“失敗”」なんて報道もあった他、最近のテック業界は生成AI一色で「メタバースなんてもう流行らん」という声も少なくない。市場を牽引する立場のMetaも、依然投資フェーズとはいえVR部門で赤字を垂れ流している。本格普及にはまだまだ遠い状況だ。

「メタバース」事業化の成否(NTTデータグループのコンサルティングファーム・クニエが報告した「メタバースビジネスの実態調査」より)

 一方で、メタバースの可能性を信じ、着実にコミットし続ける動きもある。企業としてメタバースに取り組むところも増えており、静かに、しかし着実に普及への道のりを進めている。

 その1社が京セラだ。セラミック製品やスマートフォン(個人向けから撤退したがTORQUEは継続)などコンシューマー製品も手掛けてはいるが、稼ぎ頭は圧倒的にB2B領域。そんな同社がB2B製品の展示会を、なぜかメタバースで開催したのだ。しかも、1回目が好評ですでに2回目も実施している。一体どういう狙いがあるのだろうか。

京セラのメタバースはどんな感じ?

 そもそもの話だが、企業がメタバースを活用するにはいくつかのプラットフォームから選択するのが一般的だ。例えば、「Vket」のように複数の企業が同時にブースを出展するリアル展示会に近いものから、アバターをまとってVR上でチャットできる「VRChat」をベースにしたもの、スマートフォンからアクセスできるメタバースプラットフォーム「cluster」を使うものなどがある。

 京セラのメタバースはVRChatを使う。同サービスは「ワールド」という、VRChat上で自由に構築できるバーチャル空間を作ることで、参加者を招き入れることができる。Vketのようなお祭り感とは異なり、ワールドをゼロから作るので工数もかかるものの、どういう舞台でどう演出しながら展示を見せるのか、細部まで凝ることができる。

 今回、2回目に実施した、レーザーコンセプト製品のバーチャル展示ブース「京セラ レーザーワールド」に筆者も参加してみた。「Meta Quest 2」を被り、事前に作成したVRChatのアカウントにログイン。京セラのスタッフからワールドへのリンクを受け取って中に入る。招待制のため、不特定多数のユーザーが入り込んでしまうこともない。

 しばらくすると視界が開けた。周りは海、どうやら島に立っているようだ。中心部には巨大な建造物が見える。今回はその海という設定が展示物と関係してくる。京セラメンバーとワールドの制作で協力した「往来」のスタッフに導かれながら、目の前にそびえ立つ“要塞”に入った。

ワールドの読み込みが終わるとどうやら島に上陸したらしい。奥に見えるのが展示ブース

 なお、今回のブースは「Quest 2」の単体利用に最適化されている。VRChatを使っているため、高性能なPC前提ならもっと高品質なテクスチャを使って高画質化もできるとのことだが、チップ性能に制限のあるQuest 2単体でも体験できるよう、クオリティーを調整しているという。

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