ただ、ブロー成形は中に空気を入れて、樹脂を型に貼り付けることで中空の形を作る製法なので、中心から距離が遠くなる部分は薄くなる。その薄くなる部分が、力が掛かりやすい「く」の字の曲がっている部分、つまりこの椅子でいう、腰が当たる部分と、その反対側ということになる。そこは、もっとも強度がほしい部分だから、あまり距離を出せない。
「そういった制約をクリアしながらデザインしていきました。まあ、実際に作ってみたら、結構厚みが残っていましたね。だから、素材的にも構造的にも強度は結構あって、屋外に持っていって雨ざらしにしてもいいし、投げたりしても多分大丈夫なくらい、堅牢性のあるものになっています」と橋田氏。
見た感じは柔らかいし、樹脂製とは思えないソフトな座り心地なのだけど、華奢(きゃしゃ)ではないというのが面白い。これも樹脂製のメリットのひとつだろう。ただし、岩谷マテリアルさんによると「濡れた床面による転倒や日光による変形を避けるため。屋外での長期間放置はやめてください」ということだなので、そこは注意が必要。
そもそも、座椅子というのはあまり出しっぱなしで使うものではない。リビングにポンと座椅子が置かれている風景はあまり想像できない。それは、ビーズソファにもいえる。大東寝具の「テトラ」のような、インテリアと馴染むビーズソファもあるのだが、それは例外。不定形だからこそ座り心地が良いビーズソファは、不定形だからこそ見た目がだらしなくなりやすい。また、結構汚れやすいし、アレに座って仕事する気にはなかなかなれない。
「高さがあって、背もたれがあるというのは、リビングに置く椅子として重要だと思うんです。お風呂の椅子をやった時に背もたれを付けたんです。それでお風呂の椅子も椅子なんだから、インテリアとしてちゃんとしたものを置きましょうという売り出し方をしたんです。最初は『何コレ?』という感じでしたが、じわじわと売れていって。単なるお風呂のスツールが背もたれを付けたことでインテリアに昇格したんです。それは結構大きなインパクトがあって、それまで100均とか、高くても1000円未満が当たり前だったのに、お風呂が好きな人が、5000円以上の製品を買ってくれるわけです。それが、風呂の椅子市場の価格をアップさせることにつながったんです」と橋田氏。
それと同じように、高さと背もたれがある、でも床に座るための新しいインテリアとしての地位に座椅子を引き上げるというのが重要なポイントになっているのだろう。その上で、リラックスもできるし仕事もできるという機能性もある。
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