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PC作業もしっかりできる新しい座椅子「エノッツ フロアチェア」 その仕掛けをデザイナーに聞いた分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

» 2023年07月19日 18時26分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「この企画よりもっと前に、『座椅子に座っちゃうと、仕事ってしにくいよね』って話してて、その時に、PC操作がしっかりできる座椅子を研究しようと色々やってたんです。その時に、最適な前傾の角度も実験で出してたんです。『フロアチェア』では、その時のデータを参考に角度を決めました」と橋田氏。

 座椅子に高さを持たせようと考えれば、その流れで、前傾できる機能は搭載できると考えるのは自然な流れだ。そこから、全体のデザインを導いていったという。

「誰が見ても座り心地がよさそうな見た目の形を意識しました。柔らかい心地よさが伝わるデザインにしようと考えたので、3D CADのモデリングでは、主にスプライン曲線(コンパスなどの人工的でない自然物にあるような曲線)を用いてデザインしました。お風呂の椅子だと、お風呂場は狭いので、あまり大きくするわけにはいかないのですが、リビングに置くなら、少しゆったりした感じにできます。なので、幅とかも余裕を持たせました。とはいえ、移動しやすさも絶対に必要だと思っていたので、その辺のバランスをとりつつ、という感じです。でも、座面が広くて、少し曲面になっていることで、見た目からも座り心地が良さそうに見えることを大事にしています」

背もたれに寄り掛かった時の安定も良いので、結構リラックスして座っていられる。高さも、このくらいで十分と思える。これ以上を求めるならビーズクッションの方が良いと言うか、それはまた別の用途になるだろう

 写真で見ると、どことなく懐かしい未来のようにも見えるデザインだが、これが実際に部屋に置いてみると、あまり突出せず、和室にも洋室にも、広い部屋にも狭い部屋にも、ちゃんと馴染むのが面白い。

 「やっぱり、日本の家に合わないと意味がないかなあと思うんですよ」と橋田氏。岩谷マテリアルの安部氏は、若い女性だが、レッドの「フロアチェア」を愛用しているそうだ。「レンガっぽい赤が良い感じの差し色になってて、でも派手にならなくて気に入ってます。部屋にいる時は、だいたいそこに座ってます」(安部氏)。

 低めの背もたれが付いていて、これが、意外にもちゃんと後ろに体重をかけても安定している。おかげで、ちょっとリラックスして座ることができる。

 「背もたれのノウハウは、『ミニマルチェア』の時に実験済みでした。腰のちょっと上までを押さえてくれれば、人間は割と安定して長時間座っていられることが分かっていたので、それよりももう少し高くして、もたれやすくしています」と橋田氏。

ブロー成形の製法上、樹脂が薄くなる部分ができてしまうため、長さに制限が生まれることの説明図

見た感じは柔らかいけど意外と堅牢

 サイズのバランスに関しては、製造上の制約もある。この「フロアチェア」は、リビングに置く家具として、かたまり感が出るように考えられている。しかし、射出成形で作るには、カーブが多く、金型が複雑になってしまう。

 そこで、仕上がりの美しさでは射出成形には及ばないが、コストがかからず、かたまり感は出せる「ブロー成形(中空成形)」を採用している。一工程で袋状の成形ができるのがポイントだ。

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