「コロナでリモートワークが一般化したことで分かったんですけど、意外に床に座って低いテーブルで仕事をする人は多いんです。それで、『ENOTS インテリアバッグ』というのを作ったんです。それが評判が良くて、リビングの中央に出ていける樹脂製品をシリーズとしてやっていこう、という感じになったのも、『フロアチェア』実現の後押しになりました。仕事道具や趣味の道具を入れたまま、移動できて、リビングの床に置いてもキレイなバッグがあって、それを横に置いてテーブルで作業するための座椅子があると、フロアで過ごすという提案にもなって、相乗効果で売れていくかなという狙いもありました」と橋田氏。
そうして、この類似品のない、新しいジャンルの椅子が生まれたわけだ。個人的に気に入っているのは、背面にある取っ手代わりのくぼみの位置だ。床に置いて使う椅子は、座布団やクッションのように、自在に好きな場所に置けないと使いにくい。掃除のじゃまにもなる。だから、取っ手のようなものは必須なのだが、この位置と大きさが絶妙なのだ。
背面に手を持っていくと自然にくぼみに指が引っ掛かるので、そのまま持ち上げれば簡単に持ち上がる。その、重量バランスの良さと指の引っ掛かりやすさが良いのだ。これが穴でなくてくぼみだというのもていねいなデザイン。
使用シーンも、低いテーブルでの仕事やキッズチェア代わり、テレビなどを見たりといった、リビングでの一般的な用途はもちろん、実際に使っていて筆者が気がついたのは、ギターを弾く時の椅子としての使い勝手の良さ。「フロアチェア」に前傾モードであぐらをかいて、腿にアコースティックギターを固定すると、ボディが安定するし、正しい姿勢を楽に取ることができるから、長く弾いていても疲れない。これ、ストリートで演奏する時にも使えるんじゃないか。
何より、リビングになんとなく置いといても景色がキマるのが気に入っている。ただ、従来なかったジャンルの製品だし、実際に部屋に置いてみないとその収まりの良さが伝わりにくいのが、難しいところ。
「リモートなどもあって、皆さん、おウチで仕事できるようなグッズは揃えた後だと思うんですけど、『なかなかかわいい在宅グッズってないよね』というお声を頂くことが多かったんです。その中で、あまり大き過ぎず、適度な存在感があって見た目の美しさを損なわずに使えるという魅力が伝わるよう提案しています」と安部氏。
かわい過ぎず、お洒落過ぎない佇まいの良さに、実用的な機能という組み合わせに、筆者はとても新しさを感じる。コロンとしたかたまり感と軽快さが両立しているのも、デジタルとアナログの並立が進む時代に似合っている。座椅子をアップデートしたら、全く違う新しいものができたという感じが楽しい。
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