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“荒らし防止”で子供も実感できる? マイクラで学ぶ「ホワイトリスト」マイクラで学ぶサーバ管理

» 2023年08月03日 12時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 子供の“ゲーム欲”は計り知れないものがある。友達とのコミュニケーションにもなるため、ある程度は許容したいが、かといってそれで勉強がおろそかになるのも考え物……。そういうときに便利なのが「遊びたいという圧倒的モチベーションを勉強の理由にする」という作戦だ。

photo 松本佑樹(GMOインターネットグループ株式会社/ドメイン・ホスティング事業本部ConoHa事業部)

 ネットを見ているとたまに、「子供がゲーム『Minecraft』で友達とマルチプレイしたいというから、サーバ管理を学ばせてみた」というエンジニアの子育てエピソードを見かける。Minecraftでマルチプレイするには専用サーバを立てる必要があるのだが、これを子供自身に運用させてみてITやビジネスのキホンを体験してもらおうというアイデアだ。

 実際、Minecraftでサーバ管理を学ぶのは可能なのか。本連載ではGMOインターネットグループの レンタルサーバサービス「ConoHa for GAME」を使って実際にMinecraftサーバを建てながら、GMOインターネットグループの松本佑樹さん(ConoHa事業部)にサーバ管理の仕事とコツについて教えてもらう。

誰と遊びたいか、誰を信じられるか

 前回はMinecraftサーバを建てたが、この段階ではまだ1人プレイしかできない。Minecraftそのものは完全に動作するが、誰も招待していないためマルチプレイできない。

photo ワールドはできた。今はまだ一人の世界

 今回はホワイトリストの設定を見ていく。ConoHa for GAMEにはホワイトリストのON/OFFと、ホワイトリスト登録機能、ユーザー検索・削除機能がある。画面はかなりシンプルだ。

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 近年では差別防止の観点からホワイトリストを「許可リスト」、ブラックリストを「拒否リスト」と呼ぶこともあるが、今回は機能の名前に合わせて従来の呼び方を採用する。

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── ホワイトリスト設定をOFFにできますが、これはOFFにすると誰でもワールドに入れるようになるのでしょうか?

松本さん サーバのIPアドレスを知っている人なら誰でも入れます。逆に、IPアドレスを知られない限りは誰も入ってきません。デフォルトだとIPアドレスは非公開、ホワイトリスト設定はON、ホワイトリストは登録ゼロなので誰も入れません。

── じゃあ、ホワイトリスト設定をOFFにしたままIPアドレスを公開すると……。

松本さん 誰でもワールドに入れるようになりますが、代わりにいわゆる“荒らし”が入ってくる恐れもあります。

── 作っていた建築物を壊されたり、ゲーム内で攻撃されたり、チャットで誹謗中傷されたり……。いろんな可能性が考えられますね。Minecraftに限らず現実的には、ホワイトリスト設定が不適切だと何が起こるでしょうか?

松本さん Webサーバに侵入されるとフィッシングサイトを勝手に作られたり、メールサーバの認証を破られると迷惑メール送信の踏み台にされたりする可能性があります。DDoS攻撃の踏み台に使われるリスクもあります。

── 大学がメールサーバに侵入されて、迷惑メールの送信に使われた事例も聞きますね。

photo 新潟大学では4月に、不正アクセスでサーバを迷惑メール送信に悪用された

松本さん しかも、踏み台になるとIPアドレスがブラックリストに載ってしまって、本当に届いてほしいメールが相手に届かなくなることもありますね。

── ConoHa for GAMEではホワイトリストを使っていますが、ブラックリストとホワイトリストには使い分けがありますよね?

松本さん Minecraftでいうと「基本誰でも入ってきてもいいですよ」というパブリックな遊び方をする場合はブラックリストを使うのがいいですね。ConoHa for GAMEにはブラックリスト機能がないですが、Minecraftには「BANコマンド」があるので、これをブラックリストのように使うことで対応できます。

 身内の友達同士でクローズドな遊び方をするならホワイトリストを使うのが一般的だと思います。

── ホワイトリスト設定のコツはありますか?

松本さん Minecraftにおいては、一緒に遊ぶ友達だけ入れるのがいいかなと思います。現実で会ったことはないけどSNSでは仲良くしている人は友達なのか……みたいなところはありますが、平たく言えば「知らない人は入れないようにしましょう」ですね。

「荒らし」で実感するホワイトリスト

 これでホワイトリストの設定ができた。子供にいきなり「ホワイトリストとは〜〜」と話し始めても難しいかもしれないが、「知っている人だけ追加する」「知らない人を追加すると荒らされるかも」と教えればホワイトリストの概念とメリットは感覚的に分かるだろう。

 YouTubeを見てみると「小学生のワールドを荒らして泣かした」「ワールドを荒らされた」という内容の動画もたまに見かける。許可を得て荒らしている場合や、「絶対に荒らす攻撃者 vs. 絶対に荒らさせないサーバ管理者」というゲーム企画の場合もあるため、全てが攻撃というわけではないが。

 そういう動画を見せて「ホワイトリストを適切に設定しないとこうなるかも」という教え方はできるかもしれない。

 もちろん、ホワイトリストを設定しただけで荒らしが絶対に起きないとはいえない。次回はMinecraftで「権限管理」を学んでいく。

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