国立科学博物館(科博/東京都台東区)が8月7日午前10時に始めた、運営費の支援を募るクラウドファンディングが大きな反響を集め、8日9時半までに1万8000人以上から計3億円超の支援があった。目標額(1億円)の3倍以上が、1日で集まったことになる。
1億円を超えた7日夜に科博は、「まさかこんなに反響をいただけるとは想像だにしておらず、率直に驚きつつも感謝の気持ちでいっぱい」などとコメントを発表。返礼品の一部は在庫が切れているが、可能な品は在庫を追加する予定だ。
科博は、150年にわたり、自然史・科学技術史に関する幅広い分野の標本・資料を500万点収集してきたが、標本・資料の収集・保管が、「資金的に大きな危機にさらされている」という。
コロナ禍により入館料収入が激減。2019年度は約7.5億円だったが、20年度には約1.5億円まで落ち込んだ。加えて、物価高で保管容器や保存液(エタノールなど)も高騰。23年の光熱費は21年比約2倍になる見通しだ。
その結果「自助努力や国からの補助だけでは到底追い付かず、事業費・研究費削減等にも及んでいる」「標本・資料の新規受け入れを断念せざるを得ないケースも増えている」という。
このため、クラウドファンディングで運営資金を募ることを決断。返礼品として、「隕石アクセサリー」「アクリル樹脂植物(標本)」などの品、バックヤードツアーや「古代人に触れる」「哺乳類剥製づくり」体験、往年の旅客機「YS-11」搭乗体験、常設展10年パスなど、科博らしいコースを40種類そろえた。
7日にクラウドファンディングが始まると、日本を代表する博物館が資金難に陥っていることを憂えたファンや、返礼品を魅力的に感じたファンから支援が殺到。クラウドファンディングプラットフォームの「READYFOR」(レディーフォー)全体がつながりにくくなるほどアクセスを集めた。
クラウドファンディングは11月5日まで続ける予定。資金だけでなく「応援してくださる新たな仲間と出会える機会になる」ことも目的にしている。今後「研究員による動画配信や記事発信など科博のリアルをお見せする機会をたくさん設けていく」という。
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