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“究極の服”は「ボディースーツ+拡張現実」? 生地素材スタートアップ がSF的に描く未来SFプロトタイピングに取り組む方法(3/3 ページ)

» 2023年09月01日 08時00分 公開
[大橋博之ITmedia]
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未来のファッションって? 洋服の将来を“SF的”に考える

大橋 前置きが長くなってしまいましたが、ここからはファッションに興味があるというSF作家の十三不塔さんに加わってもらって「未来のファッション」についてお話を伺いたいと思います。十三さん、自己紹介に併せてファッションに興味をお持ちという背景を教えていただけますか。

十三 ご紹介いただいた通り、作家です。もっぱらSF小説を書いています。他にも専門学校で先生をしたり、ゲームやラジオドラマのシナリオを書いたりしています。ファッションに興味があるし、ファッションが絡んだSF小説を書きたいと思っていたので、取材を兼ねてお邪魔しました。

大橋 それでは直球ですが、お二人は未来のファッションをどうお考えですか?

正面 今、ファッションの世界ではSDGsへの取り組みが盛んです。持続的で循環型の社会を実現する。材料などを無駄にせず製品を作るという流れになっています。

 生地や洋服が余ったから捨てましょうという世界を壊し、できる限り循環させていくことが、未来のファッションの一つのトレンドになっています。

 私は、無駄にしない、廃棄しない究極の服は、例えばスマートグラスをかけたりハイテクのコンタクトレンズを付けたりすることで、自分の服を自由自在に変えられる、あるいは相手からは服の色が変わって見えるといった時代が来ると考えています。

 ドイツの自動車メーカーのBWMは、ボディーカラーを自由自在に変える自動車「iX Flow Featuring E Ink」を発表しました。この自動車は白から黒へ、黒から白とボディーカラーが変化をするというものです。このようなことを服にも応用できないかと。もっといえば、肌の色も変えられるようにする。人種の概念を破壊することで差別問題も解決できるのではと想像しています。さらにはジェンダーや体形の概念も破壊できれば、さまざまな問題も解決できるのではないかと思っています。

大橋 具体的にはどのような服になるのですか?

正面 気温や湿度など気象の変化に影響を受けない究極の繊維を作り出し、それでベースウェアを作り着用するというものです。ボディースーツのようなものです。

 見る相手にコマンドすることで、その見る相手の理想の姿になると面白いかもしれません。気象の変化に影響のない究極の繊維だと、冬にダウンジャケットを着るという概念もなくなります。

photo BVLAKが考える未来のファッション

十三 SF的で面白いですね。着る日もあれば着ない日もある。逆にコンタクトレンズを付けていない人が見ると全身タイツでちょっと恥ずかしいかもしれない(笑)。

大橋 そんなアイデアからどのようなSF小説ができそうですか?

十三 二極化した世界の物語とかかな。まずお金持ちがこれを手に入れて、お金持ちのブームになる。そこに入れない人たちもいて、軋轢(あつれき)が起こる。もしくは別のパターンとして、この技術が浸透した世界はどうなるのだろうという物語。「そんなスーツは脱ごう」とする人たちが現れるかもしれない。

正面 SF小説を書かれたらぜひ、読んでみたいですね。

大橋 ファッションは自由に着ることが楽しみの一つだと思います。そこはどうお考えですか?

正面 確かに、洋服を着るということが人間らしさを表す部分ではあります。毎日同じ洋服を着る人もいれば自分の好みの服を着る人もいるでしょう。

十三 ファッションに興味がない人もけっこう多いですからね。

正面 でも洋服を選ぶのは面倒だと思うんです。実は私も面倒だと感じています。自分の会社で作った生地で、高級ブランドが作った洋服を着るのは楽しいのですが、朝、起きて「今日、何を着ようか」と考えるのは正直、ストレスです。

大橋 女性としてはどうですか?

田中 私はファッションが好きなので、洋服を買ったり着たりすることの楽しさはもちろんあります。けれど、面倒だと感じる人は増えていると思います。サブスクで着る服が定期的に送られて来るサービスもあります。それを使っている友達も多いです。技術が発展すれば服が衣食住の衣という基本の位置付けではなく、ファッション好きな人が楽しむだけのもの、表現をするだけのものという意味になる未来もあるかもしれませんね。

十三 人間がファッションを選ぶのですが、ファッションが人間を変えていくというのは面白いと思います。例えば「このワンピースを着たいから痩せる」というのがあります。服に似合う身体になる。それと、服を着ることで自覚が生まれる。例えば警察官は制服を着ることで「警察官なんだ」という自覚が生まれるのだと思います。

 服装がその人の内面を変えて行く。その人の何かを変えていくというのが面白いと思いますし、そういうSFを書いてみたいですね。

大橋 最後にBVLAKの今後のビジョンを教えてください。

正面 ファッションで世界を変えようと取り組んでいる人たちはたくさんいます。そんな先進的なアイデアを持つ人たちを巻き込んで、独自のアイデアと日本の技術でより良い社会、世界を作っていき、歴史に残る偉業を成し遂げたいです。

田中 SNSなどでたくさんの情報が入って来て、知識は増えましたが、自分の感性が失われてしまっているのではないかと感じてしまうときがあります。ファッションに携わる身として、ファッションを楽しむいち個人として、どのような技術が発達したとしても感性は磨き続けたいと思っています。そしてその感性を社員全員が生かし、どんな時代でもその先を行くかっこいいBVLAKであり続けたいです。

大橋 ありがとうございました。


 未来のファッションは着る煩わしさから解放されるかもしれません。これからのファッションの一翼を担う生地メーカーからそのようなプランが出てくることに驚きました。究極の洋服がいつか誕生しそうです。

 SFプロトタイピングに興味がある、取り組んでみたいという方がいらっしゃいましたら、ITmedia NEWS編集部を通してご連絡ください。SFプロトタイピングを提供させていただきたいと考えています。

連載:「SFプロトタイピング」で“未来のイノベーション”を起こせ!

SF《サイエンスフィクション》をビジネスに活用する「SFプロトタイピング」。現実を取り払って“未来のイノベーション”を生み出す可能性を秘めた取り組みの最前線を追う。

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