「今回、展示の回り方のパターンを設定しています。おおまかに言うと、AIに対してちょっと心配が勝る人と、ポジティブにAIを使っていきたい人で、右回りと左回りに分かれて展示を見てもらおうと考えました。そうやって、一度ぐるっと一周回ってご覧頂いたあと、AIに対しての自分の感じ方がどうなったか──そういうものを、一緒に来た方やスタッフと話ながら振り返ってもらえるような展示にしたいと思ったんです。展示を見た後で、自分の考え方が揺らいで、そこから一歩踏み出してもらえるようなことが起こったらうれしいなと思って考えた仕掛けです」(佐久間さん)
筆者は、AIとは仲良く遊びたいと思っているので、右側から左回りで見ることになる。最初のパネルは、『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』などの著書もある、うちの子専門家の大場美鈴さんが、AIに悩んでいる子どもへ、どういう声を掛けたら良いかについて聞いた過程の映像と、編集ではカットになったものの興味深いやりとりを表示したパネル。
映像は約2時間程度のインタビューを3分ほどに編集したものだが、それだけに内容が凝縮されていて見飽きない。
「大場さんは、ご自身が発達障害やグレーゾーンのお子さんを育てられてきた中で、どういうふうな言葉で伝えると、お互いがしんどくなくやっていけるのか、それを『声かけ変換』という形である種のマニュアル的な施策を提案されています。その一方で、それで済めばOKとは思ってほしくないということも仰っている方で、そういった方から発せられる言葉は、今回の企画と親和性が高いのではないかと思って、お声掛けしました」と佐久間さん。
実際、映像でも、チャットGPTとの対話の中で、AIの答えが杓子定規過ぎるという感想を持ちつつ、質問→答えで終わらず、そこから更に話を展開させられる、対話ができることに可能性を見出している。その過程がとても面白い。
2番目のパネルは、スピードワゴンの小沢一敬さんが、AIと漫才をしようと試みる映像。「小沢さんはNHKで言葉を扱う番組のMCをされていたりもしますが、それ以上に、やっぱり言語センスが優れている方だなと思うんです。小沢さんらしいフレーズというのがすごく明確に世間一般に認知されている方ですし、それが人を笑わせる、面白がらせるというところにつながる暗黙知みたいなものを、小沢さんなら言語化してくれるんじゃないかと期待しました。どこまで深く考えられているのか、ミステリアスなところも魅力ですよね」と佐久間さんは、小沢さんを選んだ理由を話してくれた。
これはもう、実際に見てもらう方がいいのだけど、甘い言葉をすごいスピードでいくつも出してくることを評価しつつ、その内容に的確な評価をし、AIに「失恋」というワードの言い換えをさせながら「からの?」「と言いつつ?」などと突っ込みを入れて、そのやり取りそのものを「漫才」と評するなど、しっかりと面白がる。その上で、漫才の可能性に対して、やや悲観的な結論も提示する。
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