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生成AIをどう思うかで観覧ルートが異なる「コトバにならないプロのワザ」展、仕掛け人の意図は? “隠しプロンプト”も(3/4 ページ)

» 2023年09月25日 12時19分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「小沢さんのインタビューは面白くて、動画からこぼれ落ちているものも沢山あります。立った状態で見てもらう動画なので、3〜4分くらいにしないと見てもらいにくいんです。ですから、テキスト化したパネルも是非読んでもらいたいですね。カットした分も、せっかくのコンテンツなので、どうにかしたいとは思っています」と佐久間さん。確かに、展示の中のコンテンツとして見るなら、4分くらいが適当だし、その長さだからこその凝縮感も悪くないと感じた。

動画では泣く泣く切ったというパネラーの方々のインタビュー内容のハイライトは、パネルで読めるようになっている。全文は、会場で読んでほしい

 3つ目のパネルは、詩人の谷川俊太郎さんによる、AIに詩を作ってもらおうという試みの映像。「谷川さんは、詩という表現の中にあるポエジー(詩の持っている情趣、詩情)について、ずっとライフワークとして考えられている方だと、私はそんな風に想像していて、ポエジーをAIは見出せるのか、言葉にポエジーを埋め込めるようになるのか、というところで、色々、お話をうかがいました。谷川さんも、ChatGPT登場前の、あるタスクに特化したようなタイプのAIは既にご存知で、自分の詩をたくさん学習させるとどうなるかとか、そういうところも興味を持たれていました」と佐久間さん。

谷川俊太郎さんの動画コンテンツは、今回の展示のハイライトともいえる内容。「詩」のように見える言葉と、「詩」の違いは何なのだろうか

 映像では、ノンセンスを谷川さん自身はどう考えているのか、AIはノンセンスをどう受け取るのかという部分を中心に、AIが作る詩を谷川さんが批評していく。「初心者が読むと、こういう(AIが作った)ものも詩なんだなと思うかも知れませんね」という言葉が重い。

 「この展示を通して、ChatGPTと自分とのあいだのズレから、改めて自分を発見してもらえるとうれしいと思います。AIは答えを返してくれないと切って捨てるのはもったいないと思うんです。もっと可能性があると思うし、小沢さんの映像でも言ってますけど、案外、ぐっと突っ込んでいくと、だんだん面白くなっていくんですよね」と佐久間さん。

生成AIに否定的な人が逆の順番で見ると?

 ここからは裏側というか、AIと社会の関係と現状について解説するようなパネル展示になる。まずは、「生成AIのインパクトはどこから来たのか」が解説される。

 「研究開発がかなり加速したこと、それが爆発的な広まりを見せたというようなことは、皆さん、ニュースとかでも聞かれたことあると思うので、その裏にどういう研究があって、どういう技術的な進展があって、発見があったのかという、この2つのインパクトそれぞれ、支えている出来事みたいなものをストーリーラインで紹介しています」。この中では、一般的に使用されるようになるために必要だった“炎上リスク”の回避などにもきちんと言及している。技術的なブレイクスルーだけではなく、社会のつながりの中でのAIの普及という部分も並列に論じられているのが、この展示の面白さだ。

動画コンテンツのコーナーの裏側は、生成AIはどういうもので、どういうインパクトを社会に与えているのかについて解説している

 パネルは「生成AIは人間と異なる知能か?」と題された、生成AIにおける思考の方法の解説、「生成AIは人の創作を変えるか?」というタイトルのパネルでは、プロンプトと、それによって作られた詩を複数並べて、どれなら詩に見えるかを問いかけ、「生成AI時代に、人はなにを信じるのか?」という問題を提起して展示は終わる。

 しかし、これは元々AIに肯定的な筆者が選んだ回り方で見た構成。否定的な観覧者は、これを逆順で見ることになる。

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