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新macOS「Sonoma」のウィジェット機能に、オジサンがピンと来ない理由小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2023年10月10日 19時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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Sonomaは今さら「デスクトップを再発見した」のか?

 さて「ウィジェット的なもの」の変遷を確認したのち、改めてmacOS 14 Sonomaに搭載されたウィジェットを考えてみる。

 すでにMac OS X登場から20年以上が経過し、大画面化およびデスクトップ不要化は完全に定着した。筆者の執筆環境は40インチの4Kテレビをディスプレイ代わりに、常時執筆に必要なアプリ画面が占領しており、デスクトップが露出している面積はゼロである。Sonomaではデスクトップの背景に動画が配置できるようになったのも1つのウリだが、そもそも露出面積がゼロなので、その恩恵もゼロである。

筆者の仕事環境。右側にブラウザ、中央下にテキストエディタ、左上にFinder、画像ブラウザ2つで埋まっている

 なぜAppleは今ごろになって、デスクトップを再発見してしまったのだろうか。その前兆は、前バージョンmacOS 13 Venturaで搭載された「ステージマネージャ」にあるのかもしれない。

 ステージマネージャは、画面上に多数展開したアプリを、「デスクトップ」の余白部分をクリックすることで左端に避ける機能だ。画面が重なって下のウィンドウが前面に出せない、みたいな時には便利である。もちろん、40インチディスプレイを使ってウィンドウがまったく重ならない状態で使っている筆者には何の恩恵もない機能なので使っていないが、MacBook Airの13インチディスプレイで作業しているときには使ってもいいかな、と思わないでもない。

「ステージマネージャ」でアプリをまとめた状態

 ただウィンドウの入れ替えなどは、「Command+Tab」でアプリごと切り替えれば済む話だ。ステージマネージャは、キーボードを使いたくない、全てをマウスやトラックパッドでやりたい人のための機能なのだろう。その点ではハードウェアのキーボードがない、モバイルOS的な発想である。

 ステージマネージャを使うと、全ウィンドウが左側に集まるので、デスクトップ画面が広々と表示される。つまり「土地が余っている」ように見えたのだろう。だから背景を動かしてみたくもなるだろうし、ウィジェットも配置したくなったというわけか、と想像する。

 さてこの新機能であるウィジェットをどう使おうか、という話なのだが、これまでmacOSでは提供されていなかった、iOS向けアプリの「SmartNews」や「Googleニュース」のウィジットを配置してみた。

 Sonomaでは、デスクトップ部分をクリックするとアプリケーションウィンドウが四方に散り、デスクトップ画面が露出する機能が追加されている。「通知センター」のようにオーバーレイする代わりに、アプリの方をのけるというわけである。

iOSから提供されるウィジェットを配置してみた

 これでスマホを使わずに快適にニュース巡回もできる……と喜んだのも一瞬だった。ウィジットのニュース項目をクリックすると、その場でニュース本文が展開されるのかと思っていたら、なんと「続けるにはiPhoneでSmartNewsを開いてください」とグレーアウトするだけである。

続けるにはiPhoneで?

 そこでiPhoneでSmartNewsを開いた状態で再びウィジットのほうをクリックしてみたが、iPhone側は何も起こらない。ウィジェットでクリックしたニュース記事がSmartNews側で展開されるわけでもないのだ。つまり気になるニュースをウィジェットで見つけたら、それをiPhone側のアプリで改めて自分で探せと。

 GoogleニュースやTikTokといったほかのウィジットでも同じ挙動なので、これが標準仕様なのだろう。macOS側からiPhoneアプリ側にアクションが何も渡らない、一方通行なのだ。ウィジェット上ではニュースタイトルすら全部は表示されないので、情報の概要も把握できない。これではタダの飾りである。

 もしかしたら、今後iOS側のアプリがウィジェットからのリクエストに反応するアップデートが行なわれるのかもしれないが、従来であればこうした目玉機能は開発段階からソフトベンダーに情報共有され、タイミングを合わせてアップデートされるされたものである。macOS提供のウィジェットなら問題なく情報が展開されるので、まさかこれが最終仕様だとは思いたくないが、今のところ情報がない。

 デスクトップOSの強みは、複数のアプリをいつくでも同時に並べておけるというところである。Appleが抱えるプラットフォームとしては、iPhoneがMacを完全に抜き去っており、macOSがiOSの影響を受けるのは当然ではあるが、モバイルOSの強みを取り込めば取り込むほど、小画面化の方向に進む。ステージマネージャもデスクトップに配置できるウィジェットも、13〜15インチぐらいの画面サイズにはメリットがあるが、40インチクラスのユーザーにはメリットがない。

 小画面ユーザー向けの機能を手厚くして行くと、Macも最終的にはiPad程度まで小さくなるか、キーボードがないタッチスクリーン型へ向かうのかもしれない。だがサービス開発やグラフィックス、動画などコンテンツ制作では大画面での操作は必須である。大画面と小画面の両方を1つのOSでどこまで賄い続けられるのか。

 macOSの行方がどうもフラフラしてきたように感じるのは、筆者だけだろうか。

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