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さすがキヤノン、一眼カメラを“そのまま”載せた人工衛星を2基も打ち上げていた(2/2 ページ)

» 2023年10月21日 12時00分 公開
[山川晶之ITmedia]
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キヤノンの一眼をそのまま衛星に搭載

 そして、観測に必要な地表撮影用のカメラだが、何とキヤノン製のデジタル一眼カメラがそのまま載っている。初号機は一眼レフの「EOS 5D Mark III」、2号機はミラーレスの「EOS M100」で、ベースは市販品と全く同じものという(広範囲撮影用にPowerShotなども搭載している)。

 望遠レンズにあたる望遠鏡の反射板はガラスセラミックス製。初号機の焦点距離は3720mmに達し、画角にして0.5度相当。この超望遠と2230万画素のイメージセンサーを組み合わせて高い分解能を実現した。2号機の望遠鏡は筐体が小ぶりなため1800mm相当に抑えられている。

これが衛星に搭載された望遠鏡。手前が「CE-SAT-IIB」用の光学システムで、中央奥が「CE-SAT-I」用の光学システムだ
「CE-SAT-I」用の望遠鏡には「EOS 5D Mark III」が装着されている。市販品と全く同じで放射線試験などもパスしたという
「CE-SAT-IIB」用には「EOS M100」を搭載。ミラーレスタイプでしかもエントリーモデルである。これももちろん各種試験をパスしている

 しかし、市販されているカメラを宇宙空間に持っていっても大丈夫なのだろうか。チップやイメージセンサーなどの半導体は放射線に弱いと聞く。説明スタッフによると、衛星筐体はアルミ製でマウント時もカバーなどを施しており、ある程度遮蔽されているものの放射線の影響を全く受けないわけではないという。

 しかし「放射線試験設備で大丈夫なことを確認して打ち上げた」としており、試験を通して耐用年数をクリアできると判断したとのこと。初号機は打ち上げから6年経つが「元気に稼働中」という。

 また、M100はミラーレスなので可動部品が少ないものの、5D Mark IIIは一眼レフなのでミラーボックスが搭載されており、毎撮影時にミラーが稼働する。可動箇所があるということはそれだけ故障するリスクを抱えることになるが、これも「試験で問題ないと確認している。熱真空試験も突破した」とのこと。

 ただ、宇宙空間は温度差が激しいため、衛星内部に断熱加工を施し、カメラの動作に問題ない範囲に収まるよう熱設計したとしている。こうした対策は必要なものの、撮像装置を専用品ではない市販品を流用できるということは、それだけ衛星の製作コストが下がることを意味する。

新型衛星も開発中

 新しい衛星も計画中という。別の説明スタッフによれば、初号機の後継に当たるモデルで、カメラは「EOS R5」を搭載予定。望遠鏡も初号機と同様のものになるという。画素数は5D Mark IIIの2230万画素から4500万画素に上がるため、分解能もより高まる。打ち上げ日などの日程については未定とのことだが、お店で買えるカメラが宇宙で活躍しているというのは何ともロマンのある話だった。

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