キヤノンが10月19日から20日にかけて開催した、自社イベント「Canon EXPO 2023」。キヤノンが持つ新技術や最新ソリューションが一堂に揃うイベントで、新技術の一つである「SPADセンサー」を搭載したカメラ「MS-500」を展示していた。このカメラ、なんと最高ISO100万を超える超高感度撮影が可能という。
通常のイメージセンサーはCCDやCMOS技術(最近はCMOSがメジャー)で製造されているが、いずれも一定時間画素にたまった光の粒子量を測ることで電気信号に変換しているのに対し、SPADセンサーは光の粒子そのもの(フォトン)を1つ1つ数えて変換できる。1つでもフォトンを画素に入射できれば、雪崩のように電子を増幅できるため「Single Photon Avalanche Diode(単一光子雪崩ダイオード):SPAD」と呼ばれている。まとまった量のフォトンがなくても電気信号に変えられるため、ほぼ肉眼では見えないような暗さでも映像として記録できる。
SPADセンサーはその画期的な高感度性能ゆえ、世界中の半導体メーカーが開発を続けているが、カラーイメージセンサーとして商品化したのはキヤノンが初という。スイス・STMicroelectronicsやソニーセミコンダクタソリューションズもSPADセンサーを手掛けているが、採用されているのは距離を測るToFセンサーなど(ソニーセミコンはカラー対応のSPADイメージセンサーを試作済み)。
キヤノンが市販化したSPADセンサーは、1インチサイズで320万画素。展示ブースの説明スタッフによるとISOにして「100万から200万の間」に匹敵する高感度性能を持っているという。例えば、高感度撮影が得意なソニーの「α7S III」は常用感度で最高10万2400(拡張感度だと最高40万9600)を誇るが、センサーは面積比で1インチの7.4倍大きいフルサイズを採用している。画素数は4分の1ではあるものの、1インチセンサーでISO7桁を実現しているのは驚異的だ。
MS-500はフルHDの映像として出力でき、8月末から販売を開始。主に監視用途などでの利用を想定しており、放送業界で標準的なB4マウントでレンズ交換が可能という。ブースでは、ほぼ真っ暗の空港の模型を映すというデモを展示。小窓から中の様子を覗くことができたが、だいぶ暗く肉眼ではわかりづらかった模型の様子を、MS-500はノイズこそあるものの鮮明に捉えていた。
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