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ブツ撮りするなら必需品? 「ヘリコイド付きマウントアダプター」がすごかった話小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)

» 2023年11月03日 11時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 筆者はモノのレビュー記事を書いて、20数年のキャリアがある。まだライターをはじめたての頃、すなわち2000年ちょい前ぐらいは、フルサイズのデジタルカメラはプロカメラマンしか持ってなかったので、ちゃんと製品写真を撮ろうとすればカメラマンがスタジオで撮影し、ライターは使ってる状況写真をコンパクトデジカメで撮影するといった分業が行われていたものだった。

 だがデジタル一眼の価格が下がり、マイクロフォーサーズやAPS-Cといった安価な一眼ミラーレスが普及すると、レビュー用の製品写真は編集部で撮影したり、ライター自身が撮影するようになった。筆者はもともと動画の人なので写真は専門ではないのだが、趣味でフィルムカメラの修理をしていたこともあり、一通りの知識はあるのでなんとかなっている。

 商品撮影で割と困るのが、イヤフォンなど小さいものや、製品の一部分のアップなど、接近して撮影しなければならない場合だ。いわゆる「マクロ撮影」である。

 マクロ撮影を行うにはマクロレンズが必要になるが、一般的には焦点距離100mm前後の、いわゆる「テレマクロ」と呼ばれるタイプが主流だ。焦点距離の長いレンズは近接撮影距離も長いのが普通だが、テレマクロ対応レンズはこの距離を短くすることで、アップが撮れるわけだ。ただし遠くから撮る事になるので手ブレしやすくなり、三脚を使う事になる。

 これまでは、わざわざマクロレンズを買うのもなーと思っていたので、一般のレンズでなるべく高解像度で撮影し、それをトリミングして切り出すことで、小さい部分の撮影をこなしてきた。ただそれだとどうしても解像感が落ちる。なんとかしないと、と思いつつも後回しにしてきた。

昔からあった「エクステンションチューブ」

 マクロ撮影したいというニーズは、フィルムカメラの時代から当然あった。今のように誰もがレンズを取っ替え引っ替えできるような時代でもなかったその昔、標準レンズでマクロ撮影するためのアクセサリーとして、「エクステンションチューブ」というものがあった。

 これはカメラとレンズの間に挟み込む筒状のもので、これを装着するとマクロ撮影ができるという優れものである。割と飛び道具てきなアクセサリーではあるが、メーカーからも純正品が販売されており、筆者はニコン純正のFマウント用エクステンションチューブを購入し、花のアップなどを撮影していたものだ。

ニコン純正のエクステンションチューブ3タイプ

 エクステンションチューブを使うと、レンズのフォーカスリングはほとんど役に立たなくなるため、カメラを動かして被写体までの距離でフォーカスを調整する事になる。長さが3つあるのは、チューブ長が長くなるほどより近接で撮影できるからで、被写体のサイズと構図を考えて、3つの長さを使い分けるのである。

 ここまで読まれて当然お気付きだろうが、「いちいち長さ調整のために付け替えるのはめんどくさくないか」という事である。そう、実際エクステンションチューブの付替は、レンズ交換よりもめんどくさい。レンズとボディーの2箇所を外して、別のチューブでもう一回その2箇所を付けなおさないといけないからである。

 従来のエクステンションチューブは、いわゆるマウント変換アダプターではない。フランジバックが合致した純正マウントと純正レンズの間に挟み込むので、一度装着するとマクロ領域でしかフォーカスが合わなくなる。よって通常の撮影を行う時には、エクステンションチューブを外す必要がある。

 その長さ調整を、ヘリコイド構造で連続的にできるようにしたら便利なんじゃないか、というのが、「ヘリコイド付きマウントアダプター」だ。マウントを変換しなければならないようなレンズとボディーでは、もともとフランジバック調整のために、長さを継いでやる必要がある。その長さの間にヘリコイドを入れて伸張できるようにしたら、通常撮影からマクロ撮影領域までをシームレスに使えるんじゃないかというわけである。

 ヘリコイド付きマウントアダプターがいつ頃から商品化され始めたのかは定かではないが、2012年にはすでに台湾の「Hawk's factory」製のアダプターをレビューしたブログがあったので、少なくとも10年以上前からあるもののようだ。

 一方筆者が見つけたのは、焦点工房のオリジナル「SHOTEN」シリーズである。いくつか種類があるが、購入したのはM42マウント→ソニーEマウントのものだ。価格は7920円。

焦点工房の「SHOTEN M42-SE M」
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