M42マウントはその名の通り、42mm径のスクリューマウントである。オープン規格だったので、かつては多くのメーカーが採用しており、オールドレンズの数も多い。国産では旧アサヒペンタックスの「Super-Takmar」シリーズが有名で、55mmの標準レンズはそのボケ味ゆえに3〜4年前にInstagramでもバズったことがある。その他ドイツではツァイス、フランスではアンジェニュー、ロシアではジュピターといったブランドにも、優秀なM42マウントレンズがある。
筆者の手元にもSuper-Takmarが数本、カールツァイスが1本あるが、いろいろ試した結果、ブツ撮りで一番使い勝手が良かったのが、Super-Takmar 28mm/F3.5(後期型)であった。使用カメラはAPS-Cのソニー「ZV-E10」なので、35mm換算で42mmの単焦点レンズとなる。小物を撮るにはちょうどいい焦点距離だ。
そのままでは近接距離40cmが限界だが、ヘリコイドを繰り出すとそこからレンズ前3cmぐらいまで接近できる。単純なエクステンションチューブでは、フォーカス調整を被写体とカメラ間の距離で調整しなければならないが、このアダプターなら構図を決めたあとにヘリコイドを回せばフォーカスが調整できる。ある意味第2のフォーカスリングのような格好で使えるのだ。
ヘリコイドを一番縮めれば普通のマウントアダプターなので、レンズの無限遠からちゃんと使用できる。そこからレンズ前3cmの全域でフォーカスが合う42mmレンズなど、普通は存在しない。レンズを購入したのはずいぶん前なので価格は忘れてしまったが、今は6000円から8000円ぐらいが相場のようである。アダプターが約8000円なので、合計1万6000円程度。マクロレンズを購入するよりもずいぶん割安だ。
マクロ領域では被写界深度が極端に浅くなるので、商品撮影ならF8ぐらいまで絞った方がいいだろう。芸術系であれば解放でも面白い。最近の小物撮影は全てこのレンズ1本とマウントアダプターで対応できるようになった。
なにせ今から60年前ぐらいのレンズなので、今どきのようなキレは望めないが、オールドレンズをお持ちの方は、万能マクロレンズとしてよみがえらせてみてはいかがだろうか。
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