リアルではない背景を使って撮影する手法としては、CGとも相性が良いグリーンバック/ブルーバックを使う「クロマキー」撮影が一般的だが、さらに昔から使われてきたのが「リアプロジェクション」や「スクリーンプロセス」と呼ばれる、巨大スクリーンに映像を流し、その前に演者を立たせて撮影する手法だ。バーチャルプロダクションの先祖ともいえるが、大きく違う点が2つある。それが「LEDウォール」と「インカメラVFX」だ。
LEDウォールは、LEDユニットを複数つなぎあわせて巨大スクリーンにしたもの。清澄白河BASEでは、ソニー製「Crystal LED Bシリーズ」を使い、超ワイドかつ逆J字型に大きくカーブしたウォールとして構築している(天井や可搬式は他社製)。自発光式のLEDはスクリーンサイズに関係なく輝度を高くできるため、照明に負けず、演者やオブジェクトへの光の回り込みもより再現しやすくなる。
LEDウォールはスクリーンプロセスの品質向上にも貢献している。ソニーPCLでは360度カメラを使った風景映像でのスクリーンプロセスも手掛けており、専用の撮影車両も開発しているほど。実車を持ち込んで車内から撮影するデモを見たが、LEDウォールが逆J字型にカーブしているおかげでアングルを広く狙うことができ、光も回り込むため外ロケをしたような絵がカメラ越しに出てくる。
もう1つがインカメラVFXだ。これが「カメラの動きと連動して背景が動く」という技術のキモになる。例えば図書館の中にいる演者を撮る場合、連なる本棚を背景にカメラを横移動させると、本棚の位置関係(重なり具合)は大きく変わる。スクリーンプロセスの場合、映像を流しているだけなのでカメラを動かしても本棚の位置はそのままだが、インカメラVFXであればカメラに連動して、本棚の位置関係もリアルタイムで変わる。デモでも図書館を舞台に撮影していたが、カメラの動きに合わせてLEDウォールの映像がグリグリ動く様子を見ることができた。
画角もリアルタイムに変化する。一般的にカメラをズームすると近影と遠影が重なり、遠近感が少なくなる圧縮効果と呼ばれる現象が起きるが、これもインカメラVFXで再現可能。しかも、カメラが捉えているエリアだけピントポイントに表示できるため、別アングルから演者を同時に狙うことも可能だ。3D空間やアセット制作など事前準備は必要だが、撮影時にほぼ完成形の絵が確認できるのもメリットだ。
しかしどうやってこれを実現しているのか。答えは「Unreal Engine」にある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR