Unreal Engineを使うことで実現した表現方法もある。それが空間そのものをスキャンして、役者、ダンサー、パフォーマーなどをデジタルデータ化する「ボリュメトリックキャプチャー」を使ったものだ。
清澄白河BASEには、ボリュメトリックキャプチャー用のスタジオが併設されている。直径9m弱のスタジオで、直径6m、高さ3mの円柱状の中に、天井、上段、中段、下段と100台以上のカメラが配置されており、空間内を丸ごとスキャンできる。スタジオが小さいほどキャプチャーの精度は上がるが、そうなると身動きが取りづらくなる。クオリティーを維持したままダンスや複数人の演技ができるサイズとして6mをチョイスしたようだ(川崎にはより大きなスタジオがあるという)。
スキャンした3Dデータの活用幅は広い。ゲーム用途以外に、メタバースやxR分野でも使えるものだが、2D映像での活用がかなり多いという。例えば、ダンスグループであったりアイドルグループのメンバーを個別に撮影し、バーチャル空間上で同時に踊らせることができる。全員がそろって撮影する必要がないためスケジュール調整がしやすく、バーチャルカメラで自在にアングルを狙えるので「撮り逃し」がないという。
そして3Dデータなので“再利用”が可能。映像作品に使った3Dデータをアセットとしてゲーム、スマートフォンアプリなどに広げることもできる。スマートフォンゲームなどは、Unreal EngineやUnityをベースにしているものも多く、3Dアセットの横展開がしやすくなっている。これは、Unreal Engineベースのバーチャルプロダクションにも当てはまる。スキャンした演者をLEDウォールに登場させて、リアル演者とバーチャル演者を共演させたり、バーチャル演者の“無限召喚”、サイズ拡大/縮小も思いのままだ。
バーチャルプロダクションは、カメラに連動する背景で「天候や時間帯、場所に関係なく撮影できる」という部分に注目が集まりがちだが、ゲームエンジンが高性能化したことで、ゲームやスマートフォンアプリ、AR/VR/MRだけでなく、映像の分野にも浸透しつつあることを示す最たる例ともいえる。基盤が共通化されることでアセットを共有しやすくなり、制作効率化などにつながるとともに、これらのエンターテインメントの垣根が薄くなっていることも感じさせる見学会となった。
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