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“改悪”続きで「脱・楽天経済圏」の声も 「証券会社の引っ越し」で知っておきたい、注意点と候補先(3/4 ページ)

» 2023年11月13日 13時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

NISA口座は移管できない

 移管によって特定口座で保有している株式や投資信託は、次の証券会社に移動できる。ただし、注意が必要なのがNISA口座だ。NISA口座に関しては移管が行えないからだ。

 NISA口座は「一つの証券会社でしか開けない」とよくいわれるが、正確には1年ごとにどの金融機関で開くかを決められる仕組みになっている。だから、例えば2023年のNISA枠は楽天証券で利用していた場合、2024年の枠は別の証券会社で利用することも可能だ。ただし、2023年にNISA口座で購入した株や投信は、楽天証券に残り続けることになる。

NISA口座を切り替える場合のスケジュール(楽天証券資料より)

 何も手続きをしなければ、旧NISA口座のある金融機関で新NISA口座も開かれるので、変更したいなら金融機関変更の手続きが必要だ。まず旧証券会社に金融機関変更を申し込み、次に新証券会社にNISA口座を申し込む。10月1日から金融機関変更が可能で、12月中旬頃までに済ませる必要がある。

 このNISAの特徴から、実は証券会社を完全に引っ越すのが難しくなっている。もちろん、NISA口座の銘柄をいったん売却して移行先の証券会社のNISA口座で買い直すこともできるが、せっかく非課税で長期間運用できるのに、途中で売却してしまうのはもったいないといえるだろう。

 なお新NISAでも、1年毎に口座の変更が可能だが、やはり移管は行えない。もしポイントなどの都合で次々と証券会社を変えてしまうと、さまざまな証券会社にNISA口座が分散してしまうことになる。しかも新NISAは非課税期間が恒久なので、売却するまではその状態が続く。管理がとんでもなく面倒になるのは間違いないので、新NISA口座を開く証券会社はよくよく考えるほうがいいだろう。

引越し先の候補はどこか?

 ではもし楽天証券から引っ越すとしたら、候補の証券会社はどこになるだろうか。まずポイント経済圏ごとにいえば、次のような勢力図になる。

  • SBI証券:Vポイント(Tポイント)、Pontaポイント、dポイント、JALマイル
  • auカブコム証券:Pontaポイント
  • マネックス証券:dポイント(※予定)
  • PayPay証券:PayPayポイント
SBI証券は複数のポイントに対応している

 各社ともグループ内(または提携先)のクレジットカードを使った投信積立サービスも提供しており、条件面では楽天証券よりも有利なところも多い。

  • SBI証券:マルチカード(三井住友カードなど 還元率〜5%)
  • auカブコム証券:au PAYカード 還元率1%
  • マネックス証券:マネックスカード 還元率1.1%(※dカード対応予定)
  • PayPay証券:PayPayカード 還元率0.7%

 売買手数料においては、楽天証券とSBI証券だけが国内株について完全無料化している。ただし、auカブコムやマネックスもNISA口座については米国株を含め無料化しているため、NISA口座を使う限りはほぼ差はないと考えていい。PayPay証券については売買価格に上乗せするスプレッドと呼ばれる手数料がかかる。

 ことNISA口座で株式や投資信託を購入するのであれば、手数料や商品ラインアップなどは各社それほど大きな違いはなくなってきている。使い勝手は慣れの問題も大きいが、米国株やスマホアプリについてはまだ各社の作り込みには差があるように感じるので、事前によく触って、肌に合うものを選ぶといいだろう。

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