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「岸田首相フェイク動画」にみる、生成AIとフェイクニュースの関係 加速する誤情報にどう対処すべきか小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年11月14日 16時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

  11月4日、日本テレビは同社のニュース番組を模したフェイク動画がXを中心に拡散しているとして、注意を呼びかける報道を行った。もともとは2023年の夏ごろにニコニコ動画に投稿されていたものが、11月2日ごろに約30秒の抜粋バージョンとしてXに投稿され、拡散したものとみられる。

 すでに問題の動画は削除されており、現時点では日テレNEWSのYouTubeチャンネルで公開されているニュースなどでしか確認する事ができないが、内容としては女性アナウンサーが架空の投資を呼びかけるもの、岸田首相が国民に語りかけるものの2タイプが確認できる。動画には日本テレビの報道番組のロゴマークも表示されていることから、日本テレビが「被害当事者」として注意を呼びかけた格好だ。また首相の映像と音声が利用されたということで、11月8日の衆議院内閣委でも政府に対策を求める質問が出されている。

 各社の報道において、動画の制作には生成AIが使用されたとしているが、どの部分に生成AIが使用されているのか細かく説明されていないため、かなりザックリと「生成AIは問題がある技術である」といった論調のように見える。使い方の罪をツールの罪にすり替える手法はかつてのWinny裁判でも見られたところであり、全くその反省が生かされていないことに深い懸念を感じるところだが、この事件の形をもう少し細いペンでなぞってみることにしよう。

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