企業でのデータ活用を推進する動きが活発になる中、ツール選定を含めどのように進めるべきか悩む企業もいるのではないだろうか。Excelやスプレッドシードなど、すぐに導入できる“表計算ツール”でお試しするか、社内稟議を取って専用の“BI(ビジネスインテリジェンス)ツール”を採用するべきか……非常に多くの選択肢が存在する。
そこで今回は、企業のデータ活用を支援するKPMGコンサルティングの森本丈也さん(シニアマネジャー)と、佐藤基右さん(リードスペシャリスト)の2人に表計算ツールとBIツール、そして同社がデータ活用に推奨するAIツール“AutoMLツール”の特徴について、話を聞いた。
表計算ツールは、その名の通り、数値の計算や表作成などに使われているソフト。中でもMicrosoftのExcelは、業務用PCには事前にインストールされている場合も多いだろう。データ分析ツールとして使う場合は、手元のデータのビジュアル化や、マクロやVBAによる計算処理の自動化といった利用例がある。
「個人以外でも比較的小規模なグループで使われる傾向がある。そのため、部署間を跨ぐような大規模なオペレーションや経営に関するダッシュボードを作る場合は、あまりマッチしないと思う。また、大量のデータを扱う場合はソフトがフリーズする場合も。あくまで個人的な業務に関するタスクを整理することに適している」(森本さん)
また、社内のデータ分析チームを整備する際、その初手としても表計算ツールは取り入れやすい。誰もが持っているソフトだからこそ、トライアンドエラーがしやすく、データ分析の検証用として扱いやすいため“試してみる”に向いているというのも特徴の一つになる。
一方、表計算ツールには「ビジュアル化する際に手間がかかる」という弱点がある。表計算ツールを開き、いざデータ分析に取り組もうとしても、データをグラフなどに直すには、関数を使うなどの工夫がいる。利用者自身のスキルや知識量に左右されるため、未経験者や初心者はその手段を調べる必要がある。
佐藤さんは「表計算ツールはあくまで表計算のためのツール。導入はしやすいツールかもしれないが、データ分析に使うなら相応の知識が必要になる」と指摘。表計算以外にも使える拡張性があるがゆえに、操作が複雑になり、思った通りにコントロールできない場合もあるという。
これに対し、BIツールは「データをビジュアル化するためのツール」であるため、利用者側のスキルに依存せずにデータを可視化可能。また、表計算ツールに比べて大量のデータを扱った場合の処理も軽い。作成した分析結果を大規模グルーブに共有するにも向いており、専門ツールだからこその強みがその特徴だ。
森本さんは「BIツールは、未経験者から中上級者まで誰もが使えるため、表計算ツールを経由せずにいきなり導入してもいい。データ読み込ませて、パパっと可視化することもできるし、経営ダッシュボードのように経営陣が意思決定しやすいよう必要な情報をきれいに見せるための機能など、あらゆるリクエストに答えられるようベンダー側も日夜工夫をしている」と話す。
そんなBIツールで唯一の欠点ともいえるのは、社内で導入するために稟議が必要なこと。Excelのようなプリインストールされているものとは違い、好きなツールを好きなように使えるとは限らない。
「社内データを扱うわけだから、慎重に取り扱わなければいけない。情シス部門やセキュリティ部門など、経営陣など企業内の複数の部門で検討する必要があるだろうから『明日突然BIツールを使う』というのは難しいケースが多いと思う。各BIツールのコンセプトを理解してもらうよう、社内に訴えていく必要があり、仮に導入できたとしても社内に浸透させていくのが難しい場合もある」(佐藤さん)
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