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「AirTag」に車の盗難防止効果を期待、米警察が現地住民に無料配布 カナダではBMWを取り戻した例もこの頃、セキュリティ界隈で

» 2023年11月24日 08時00分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 米首都ワシントンやニューヨーク市の警察が、車の盗難防止対策としてAppleの紛失防止タグ「AirTag」を住民に無料で配布している。米国ではTikTokで出回った動画などの影響で車の盗難が急増し、警察や自治体が対応を模索していた。

紛失防止タグ「AirTag」(Appleの公式Webサイトから引用

 ワシントン市は11月、車の盗難が増えている地域の住民を対象に、AirTagやTileなどの追跡タグを無料で配布すると発表した。警察が指導して住民の車に追跡タグを取り付けてもらい、持ち主のモバイル端末の設定も手助けする。

 もしも車が盗まれた場合は持ち主に通報してもらい、警察がAirTagの位置情報を利用して追跡することで、早期発見と犯人逮捕につなげる狙い。

 これに先立ちニューヨーク市も、非営利団体から寄付された500個のAirTagを市民に無料で配っていた。ニューヨーク市内の車の盗難は前年同期に比べて13%増え、特にブロンクス区では24%の急増となっているという。

ニューヨーク市ではAirTag500個を市民に無料配布した

 AirTagは車の中の見えない場所に隠しておく想定で、利用する市民が増えれば盗難車の早期発見が容易になり、抑止効果もはたらくと警察は期待する。

 「21世紀には21世紀の警察が求められる」とニューヨーク市警は強調。警官がAirTagのデータを追跡しながらドローンやパトカーを使って盗難車を追い、発見して取り戻す動画もX(元Twitter)に投稿した。

 警察が提供したAirTagを通じ、実際に車の窃盗が摘発されているかどうかは今のところ不明だが、カナダでは自分のAirTagのおかげでBMWを取り戻したという持ち主もいる。

 カナダのニュースメディア「CTV News」によると、トロント在住の男性は家族の自宅前に停めてあったBMWを盗まれる被害に遭った。この車には万が一に備えて半年ほど前からAirTagを取り付けており、男性がすぐにアプリを開いて確認したところ、近所のホテルに車があることが分かった。

 男性はその場所へ向かいながら警察に通報し、数時間後には無事にBMWを取り戻すことができたという。

TikTokで相次いだ車窃盗の動画 「KIAボーイズ」の動画によって盗難増加

 米国では2023年に入り、KIAやHyundaiの車を盗む動画がTikTokなどで拡散し、10代の子供たちが面白がって窃盗動画を投稿する「KIAボーイズ」現象が巻き起こった。ニューヨーク市の窃盗件数は、KIAとHyundaiの車に限れば548%の激増というデータもある。

 KIAとHyundaiの車は盗難防止対策に関する欠陥を悪用して盗まれていたことから、両社ともソフトウェアアップデートなどを通じて悪用を阻止した。首都ワシントンはHyundaiと組んで1100台をアップグレードし、盗難防止ソフトウェアをインストールする対策も講じている。

 ただ、AirTagの情報を警察が利用することに対しては、プライバシー問題を懸念する声もある。実際、ニューヨーク市警の投稿には公民権弁護士を名乗るユーザーから「自分の車の位置情報に警察がアクセスすれば悪用される恐れがある。やってはいけない」というコメントも書き込まれた。

 そうした懸念を念頭にワシントン市は、持ち主が運転している車を警察が追跡することはないと説明し「追跡デバイスには持ち主しかアクセスできない」と強調する。その上で、このプログラムに参加するためには、もしも車が盗まれた場合は追跡データを警察と共有することを約束する必要があるとした。

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